アメリカの作家スタインベックの小説。1937年刊。カリフォルニア州中部のサリーナス川近くの農場を舞台に、大男でうすのろのレニーと、小男で抜け目のないジョージの日雇い労務者を中心にした物語。1930年代の経済不況下、困窮にめげず、おおらかに生きようとする素朴な農民の生が、叙情豊かな筆で描かれている。作者が世に名をなした作。原始への回帰、人間の平等、農本主義など、アメリカ精神の伝統を内包している。題名はスコットランドの詩人R・バーンズの詩『二十日鼠に寄せる』の第七節により、未来のことはだれも計画どおりにいかないものとの意味を含ませている。作者自身の手で劇化(1937初演)され、その上演でピュリッツァー賞を受けた。
[稲澤秀夫]
『大門一男訳『二十日鼠と人間』(1953・新潮社)』
…その内容はリケッツとともに行ったカリフォルニア湾での生物採集記録《コルテスの海》(1941)に詳しいが,人間社会の事象をも善悪の判断や価値観とは無縁の生物界の現象からの類推によってとらえようとするこの態度は,彼の人間観・世界観の根底をなす姿勢であるだけに,作品のすべてに影を投じている。出世作《トティーヤ台地》(1935)は,モンテレー郊外のパイサノと呼ばれる混血の土着民たちの,競争社会から解放された野放図な生活と意見とを,共感のうちにユーモアとペーソスをこめて説話風に描いた佳編だし,連作短編集《天の牧場》(1932)も《知られざる神に》(1933)も,また好評を博した《二十日鼠と人間》(1937)も,激烈な資本主義的闘争の場としての都市の喧騒を遠く離れた農村を舞台に,農民の土に寄せる愛情と信頼を肯定的に描いている。ごうごうたる賛否両論の渦まく中でピュリッツァー賞を授与され,彼の名を国際的にも高からしめた代表作《怒りの葡萄》(1939)も,貧窮農民の共闘の様を伝える迫真的描写の底から,彼らをも包摂して動いてゆくアメリカ社会と人類全体の永遠の歩みに信頼を寄せる作者の楽天的人間観と生命賛歌が聞こえてくる。…
※「二十日鼠と人間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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