五位七十五法(読み)ごいしちじゅうごほう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五位七十五法」の意味・わかりやすい解説

五位七十五法
ごいしちじゅうごほう

倶舎宗で説く,一切の事象についての分類法。倶舎宗では,一切の事象を実体としてとらえ,5つに大別し,さらにそれを 75に分けている。第1は,色法で 11種。物質的な存在を意味し,5つの感覚器官とその対象である五境,さらに受戒によって得られる防非止悪の力,すなわち他人に示してみせることの不可能な無表色。第2は,心法。意識のことで,心王ともいわれる。第3は,心所有法で,心の作用という意味。 46種ある。 (1) 一切の心と相応する心の作用である 10の大地法 (相応とは「結びつく」の意) 。 (2) 一切の善心と相応する心の作用,すなわち,10の大善地法。 (3) 仏道を行じるのに妨げとなる心と相応する心の作用,すなわち6つの大煩悩地法。 (4) 不善心相応の (すなわち悪の心と結びついた) 心の作用,すなわち2つの大不善地法。 (5) 無明に相応する心の作用,すなわち 10の小煩悩地法。 (6) 善・不善に相応しない心の作用,すなわち尋 (じん) ,伺 (し) ,睡眠など,8つの不定地法。第4は,色法でも,心法でも,心所法でもない心の作用である不相応行法 (心と結びついていない原理) 。たとえば,得 (とく) ,非得,無想果,無想定など。第5は,無為法。虚空,涅槃 (ねはん) などの択滅 (ちゃくめつ。「択」すなわち智慧の働きによって滅びること) ,自己の知らない間にひとりでに消滅してしまう非択滅の3種。

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世界大百科事典(旧版)内の五位七十五法の言及

【ダルマ】より

…まとめていえば,認識を作用,対象,機能の各側面で分析することにより,同時に,存在するものすべてをダルマに分類しているのである。また,これとは別に,すべてのダルマを五位七十五法としてまとめることも行われた。これは,法をまず有為法(諸縁によって生じたもの)と無為法(絶対的存在)に分け,有為法を,三色法(しきほう)(物質的現象),心王(しんのう)(認識主観),心所法(しんしよほう)(心に伴ってはたらく諸現象),心不相応行法(しんふそうおうぎようほう)(物でも心でもない,関係や力,概念など)の4位に分け,そのそれぞれをさらに細分し,一方,無為法を第5位とし,虚空無為空間,択滅(ちやくめつ)無為(涅槃),非択滅無為(縁がなくて現在化しなかった存在)の三つに分ける。…

※「五位七十五法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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