受戒(読み)ジュカイ

デジタル大辞泉 「受戒」の意味・読み・例文・類語

じゅ‐かい【受戒】

[名](スル)出家または在家の信者が、仏の定めたそれぞれの戒律を受けること。

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精選版 日本国語大辞典 「受戒」の意味・読み・例文・類語

じゅ‐かい【受戒】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。仏の定めた戒律を受けること。出家、在家を問わず、教団にはいったしるしとして、それぞれ特定の規律に従うことを誓う儀式で、これに従他受と自誓受の二つがあり、従他は特定の師僧から受けるもの、自誓はそうした師の得られないとき、みずから誓って受けるもので、大乗菩薩戒だけの特色である。ただし一般には大乗・小乗とも従他受であるが、特に正式の僧(比丘)になる場合は三師七証の一〇師から受ける。→授戒
    1. [初出の実例]「時三尼等官白、伝聞出家之人以戒為本、然無戒師、故度百済国欲受戒白」(出典:醍醐寺本元興寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    2. 「この御寺に戒壇たてられて、御受戒あるべかなれば、よの中のあまども、まゐりてうくべかんなり」(出典:大鏡(12C前)五)

受戒の語誌

日本では、天平勝宝六年(七五四)に東大寺で三師七証(戒和上・教授師・羯磨師と七名の立会僧)による受戒が鑑真によって執り行なわれ、天平宝字五年(七六一下野薬師寺筑紫の観世音寺に戒壇を設けての受戒が行なわれた。また、最澄によってそれ以前の具足戒とは異なる大乗戒壇の別立が企てられ、以降、種々の大乗戒が執り行なわれることとなった。

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改訂新版 世界大百科事典 「受戒」の意味・わかりやすい解説

受戒 (じゅかい)

戒を受けること。納戒ともいう。また戒を授ける側からは授戒という。仏弟子となるためには必ず道徳の基準となる戒を受けなければならないが,戒には出家と在家,その他の相違によっていくつかの種類があり,それに応じて受戒の作法にも相違がある。在家の戒としては五戒や八斎戒(はつさいかい)があり,また出家の戒としては比丘や比丘尼の具足戒,沙弥(しやみ)や沙弥尼の十戒,式叉摩尼(しきしやまに)の六戒(これは十戒に含まれる)などがあるが,八斎戒が1日(1昼夜),式叉摩尼の六戒が2年に限られているのに対し,他は捨戒しない限り,一生涯保つべきものである。受戒作法のうち最も複雑なのはもちろん出家の具足戒で,これには戒和上(かいわじよう)と羯磨阿闍梨(こんまあじやり)と教授阿闍梨,それに7人の証人(〈三師七証〉。辺国では証人は2人でもよい)が必要とされる。受戒は結界をめぐらし,その中で行われたが,後には壇を築き,その上で行われるようになった。これが〈戒壇かいだん)〉である。在家の戒の場合には,初めに仏・法・僧の三宝に帰依する三帰文を唱え,次いで五戒を一つずつ和上に従って復唱するだけでよく,和上も1人だけでよい。戒は他人から受けるのが普通であるが,大乗仏教では,戒師が得られないときには,仏前で自ら誓って受戒してもよいとする説も行われるようになった。これを〈自誓受戒〉という。
執筆者: 受戒は僧尼となる修道の基本的条件として重視され,中国では智首(569-635)や道宣(596-667)らにより研究流布された。日本でも司馬達等(しばたつと)の娘善信尼は588年(崇峻1)に百済に渡って受戒・戒律を学んだし,仏教の隆盛とともに自度僧が乱出したため,受戒制度の必要が痛感され,753年(天平勝宝5)唐僧鑑真一行の来航となった。三師七証の10人による受戒制はここに確立し,754年4月に東大寺大仏殿前に仮設の戒壇が設けられ,聖武上皇,光明皇太后などが菩薩戒を受け,沙弥など400余人が一行より受戒,翌755年10月に常設の戒壇院が大仏殿の西方に創建された。その後761年(天平宝字5)に下野国薬師寺,筑前大宰府の観世音寺に東国,西国を対象とする戒壇院が建立され,諸国の沙弥などは生国により,いずれかの戒壇にて授戒をうけた。具足戒は《四分律》《五分律》を所依としたもので,戒を持することは僧尼の行動・日常生活に大きな負担と規制を加え,平安時代にいたって最澄は《梵網経》などによる菩薩戒の受戒を提唱し,延暦寺戒壇院の建立によって,天台系の僧はもっぱらこの戒壇で十重禁戒,四十八軽戒を受けるにいたった。授戒をうけた僧尼は,その証明として戒牒を授与された。平安時代中期以降には具足戒はもちろん,菩薩戒すら持戒する僧は少なくなり,受戒制は崩壊するが,南都仏教では中川寺の実範や興福寺の貞慶などにより復興が計られ,鎌倉時代中期には西大寺の叡尊,唐招提寺の覚盛などにより戒律の復興が計られて,受戒は再び盛行するにいたった。授戒の古儀を示したものに《東大寺授戒方軌》(法進式),《円融院御受戒日記》などが伝わっている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「受戒」の意味・わかりやすい解説

受戒
じゅかい

仏教の教団に加入するために,遵守すべき戒めを受けること。その作法は諸説があるが,入団を希望する者はまず自分の指導者となる和尚を決めたのち具足戒を受ける。具足戒の儀式では,その式場である戒壇に 10人の僧侶が集り,受戒希望者はそのいちいちに敬礼し,衣と鉢とを受け,その使用法を教えられる。そして和尚となるべき人が再確認され,希望者にはわからない場所で,儀式の作法の中心となる羯磨師 (こんまし) を中心に教授師を決める。教授師は希望者のもとに行き,男性であるかどうか,親の許可を得ているかどうか,など二十あまりの点について教団生活の障害 (遮難) があるか否かをただし,結果を報告する。障害がなければ希望者はもとの場に来て,具足戒を授けてほしい旨の希望を述べる。羯磨師はこの入団希望者が受戒を希望している旨を席上の僧たちに告げ,再び僧たちの前で形式的に遮難の有無を質問し,そののち入団希望者およびその和尚が適格か否かを3度列席の僧にたずね (羯磨) ,反対がなければ,具足戒が与えられた旨を述べて結論とする。羯磨師による受戒希望の提案 (白) と適格か否かを3度はかる (羯磨) ことを白四羯磨 (びゃくしこんま) という (以上十誦律にほぼ従う) 。以上が出家修行者 (比丘,比丘尼) となるための作法であるが,中国や日本で信徒たちに団体で戒を授ける儀式を授戒会 (じゅかいえ) と称する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「受戒」の意味・わかりやすい解説

受戒
じゅかい

仏教の戒律を受持すること、および戒を受ける儀式をいう。受戒のときは、それまでの悪を至心に懺悔(ざんげ)し、心をきよめ、沐浴(もくよく)して身をきよめ、清潔な衣服を着け、高徳の戒師の面前で、まず仏法僧の三宝(さんぼう)に帰依(きえ)し、しかるのち受戒する。不殺生(せっしょう)、不盗、不妄語(もうご)(嘘(うそ)をつかない)などの戒の規則を終身守ることを誓うところに受戒が成立し、そして戒体が身に備わる。戒を備えない人は戒師になれない。受戒の場所を戒場あるいは戒壇という。在家信者の受ける戒は五戒と八斎戒(はっさいかい)で、1人の戒師から受ける。僧になるときは二百五十戒を受ける。このときは戒師のほかに教授師と和尚(おしょう)、および証明のための7人の僧が列席する面前で受ける。東大寺戒壇院ではこの作法で受戒する。戒師がいないときは自誓(じせい)受戒を認める。大乗の菩薩(ぼさつ)戒は仏陀(ぶっだ)を戒師として受ける。それを取り次ぐ師を伝教(でんぎょう)師といい、比叡山(ひえいざん)の一乗戒壇院ではこの作法で受戒する。禅宗では受戒会(え)は1週間を要し、そのほか、浄土宗、日蓮(にちれん)宗、真言宗などにもそれぞれ独得の儀式が定められている。

[平川 彰]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「受戒」の解説

受戒
じゅかい

仏教の規律である戒法をうけること。授ける側からは授戒となる。戒法は大乗と小乗でも違い,出家と在家でも違うので一様ではない。大乗仏教で在家・出家の別なく戒をうけることを通受といい,小乗仏教で在家・出家別々にうけることを別受という。大乗仏教では,菩薩戒を授ける戒師がいないときはみずから誓って戒をうけることが許される。これを自誓受といい,他に従ってうけることを従他受という。そのほか,うけた戒法の量により一分受・多分受・全分受の区別がある。

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百科事典マイペディア 「受戒」の意味・わかりやすい解説

受戒【じゅかい】

仏の教えに帰依するその証として,出家・在家の別なく,定められた戒を守ることを誓うこと。大乗・小乗によって差異があり,大乗の場合は仏・菩薩に誓って受け,授戒の師がなくても受けられるが,小乗は必ず授戒の師を必要とし,特に比丘(びく)・比丘尼の場合は厳格で,直接,戒を授ける作法を行う三師(戒和上(わじょう)・羯磨(こんま)師・教授師)と七証(7人の証明者)の下に登壇して,受戒する。中国や日本では集団で受戒する法会(授戒会)が行われた。

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