五弦琵琶(読み)ゴゲンビワ

デジタル大辞泉 「五弦琵琶」の意味・読み・例文・類語

ごげん‐びわ〔‐ビハ〕【五弦××琶】

奈良時代から平安初期に中国から伝来した5弦5柱の琵琶雅楽に用いられたが、平安中期に廃絶
広く5弦の琵琶。現在、筑前琵琶にしき琵琶などがある。

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精選版 日本国語大辞典 「五弦琵琶」の意味・読み・例文・類語

ごげん‐びわ‥ビハ【五弦琵琶】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代の五弦の琵琶。五弦五柱、糸倉がまっすぐで、普通の雅楽の琵琶に比して細長い。インドに起こり、中国を経て、奈良時代に日本へ伝来。平安中期にはすたれ、正倉院に一面残存。〔正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳
    1. 五弦琵琶<b>①</b>〈奈良県正倉院蔵〉
      五弦琵琶〈奈良県正倉院蔵〉
  3. 近代の五弦の琵琶。薩摩琵琶系統の錦(にしき)琵琶や、鶴田派の琵琶と、筑前琵琶の五弦。すべて四弦に一弦を加えたもので、五弦五柱。ただし、鶴田派のものは第四、第五両弦は同音で、複弦として弾奏する。

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改訂新版 世界大百科事典 「五弦琵琶」の意味・わかりやすい解説

五弦琵琶 (ごげんびわ)

単に〈五弦〉ともいう。古代インドに端を発し,仏教文化の一部として東アジア諸国に伝えられたと考えられる5弦直頸の琵琶は亀茲きじ)琵琶,胡(こ)琵琶とも呼ばれ,4弦曲頸の琵琶と本来は系統が異なるが,伝播伝承の過程において相互に影響を及ぼした。低音の第1~2弦を持続伴奏(ドローン)とし,他の弦で旋律的な動きを奏しながら声楽曲の伴奏をする,というのが本来の用途であったと推定される。朝鮮半島では郷琵琶(ヒヤンピパ)と呼ばれ,雅楽合奏の一部に利用されていた。日本へは奈良時代に唐から伝来したが,平安中期にはやくもすたれ,わずかに正倉院に残る楽器1面と陽明文庫蔵の楽譜《五絃譜》(林謙三解読)によって古代の様子を現代に伝えている。

 古代の五弦の流れを汲みながら楽器自体は4弦4柱の形をとっていた近世琵琶楽では,筑前琵琶の2世橘旭翁・橘旭宗,薩摩琵琶系統の水藤錦穣・鶴田錦史が新たに5弦のものをくふうして音楽表現多様化に役立てている。
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