単に〈五弦〉ともいう。古代インドに端を発し,仏教文化の一部として東アジア諸国に伝えられたと考えられる5弦直頸の琵琶は亀茲(きじ)琵琶,胡(こ)琵琶とも呼ばれ,4弦曲頸の琵琶と本来は系統が異なるが,伝播伝承の過程において相互に影響を及ぼした。低音の第1~2弦を持続伴奏(ドローン)とし,他の弦で旋律的な動きを奏しながら声楽曲の伴奏をする,というのが本来の用途であったと推定される。朝鮮半島では郷琵琶(ヒヤンピパ)と呼ばれ,雅楽合奏の一部に利用されていた。日本へは奈良時代に唐から伝来したが,平安中期にはやくもすたれ,わずかに正倉院に残る楽器1面と陽明文庫蔵の楽譜《五絃譜》(林謙三解読)によって古代の様子を現代に伝えている。
古代の五弦の流れを汲みながら楽器自体は4弦4柱の形をとっていた近世琵琶楽では,筑前琵琶の2世橘旭翁・橘旭宗,薩摩琵琶系統の水藤錦穣・鶴田錦史が新たに5弦のものをくふうして音楽表現多様化に役立てている。
執筆者:山口 修
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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