仕切(読み)しきり

精選版 日本国語大辞典 「仕切」の意味・読み・例文・類語

し‐きり【仕切】

〘名〙 (動詞「しきる(仕切)」の連用形の名詞化)
① 区切ること。へだてを設けること。また、そのもの。かぎり。
※本福寺跡書(1560頃)「烏丸がさきにて、船屋形を構へ、仕切りを結び結びて」
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一一「水と油のやうに夫婦の間には截然たるしきりがあって」
② 区切られた一まとまり。
満済准后日記‐永享四年(1432)一一月二九日「及晩頭春日山上雷鳴出〈略〉只一しきりにて候し」
※玉塵抄(1563)三一「かねをつくも十八づつ二度つけば三十六ぞ。三十六つくが一きりぞ。三しきりつけば百八なり。此は百八煩悩をつき破る心ぞ」
商家などで、取引または帳簿のしめくくりをすること。決算。
浮世草子・新御伽婢子(1683)五「今日しも都は年の半の仕切(シキリ)といふ物にて、下が下がの売人は、とみの事多し」
浄瑠璃・心中天の網島(1720)上「六十日六十日に、問屋の仕切にさへ追はるる商売」
※滑稽本・人間万事虚誕計‐後(1833)「盆と暮に二朱づつお仕切(シキリ)で」
歌舞伎桑名屋徳蔵入船物語(1770)五「問屋の書証文か仕切同然の確かなる事故」
物事決着がつくこと。きまり。けり。
芸娼妓をあげる際、一定の時間を区切ること。
洒落本・粋学問(1799)二「翌(あす)の晩よひにきたら仕切(シキリ)に往てゐるといふて行ずに向ふを鼻明してやらふか」
相撲で、両力士が立合いの構えをすること。
※落語・相撲の蚊帳(1896)〈三代目柳家小さん〉「オイ相撲はしきりと云ふのをするのだよ。確(しっか)りと蛙(かいる)が坐って居る様だ」
⑨ 証券業者が顧客から受けた売買注文を取引所を通さず、店頭で売買を成立させること。上場株式では禁止されている。仕切売買。自己売買。
⑩ 清算取引で、転売、買戻しをして売買建て玉(ぎょく)をなくすこと。
⑪ ある集団・会合・場などを指揮・運営すること。

し‐き・る【仕切】

[1] 〘他ラ五(四)〙 (「し」はサ変動詞「する」の連用形)
行く手をさえぎる。道をふさぐ。
海道記(1223頃)手越より蒲原「岫崎と云処は風飄々と翻りて砂を返し波、浪々と乱れて人をしきる」
史記抄(1477)一三「敵に兵糧をもしきられしとて」
② 区画する。間をへだてる。間に境界をつける。
石山本願寺日記‐証如上人日記・天文一〇年(1541)二月一三日「女房衆の方を以屏風しきり」
③ 取引の決算、または支払などをする。
(イ) 商家で、帳簿や取引の決算をする。総勘定をする。
※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)一一月二一日「御しちやの銀五百目かり申候。只今しきって、さいそく申候」
(ロ) 値段を定め、取引の約束を済ませる。取引の契約、または金銭の授受を完了する。
※茶屋諸分調方記(1693)四「銀のあるきもいりは親の手まへを当分にかねわたし仕切、我がぢきの奉公人とさだめ茶や奉公に出すも有」
(ハ) 芸娼妓などを揚げて遊興する約束をする。
※浮世草子・好色盛衰記(1688)二「室津のつづけ買とて、女良有ほどしきりて、日毎になぐさみ替てあそべば」
④ ある物事の全体を掌握し、指示などを出しつつ処理する。
※地の群れ(1963)〈井上光晴〉二「これからみんな自分が仕切ることになっとると」
⑤ 終わりまでする。物事を最後までし終える。また、きっぱりとする。「話をしきる」
※浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一「男の有身なれば、心はいやにあらね共、どふも思ふにまかせぬと、ならぬ返事を仕切(シキリ)て」
[2] 〘自ラ五(四)〙 相撲で、力士が立合いの姿勢をかまえる。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉五「せき立ってしきるからおかしいぜ、ヲット行司の役をたのむぜ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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