代える(読み)かえる

精選版 日本国語大辞典 「代える」の意味・読み・例文・類語

か・えるかへる【代・換・替・変・易】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]か・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] ( 代・換・替・易 )
    1. ある物を与え、その代わりに他の物をもらう。交換する。ひきかえる。とりかえる。
      1. [初出の実例]「馬を換(カヘ)て相辞(さ)りて取別(わかれはて)ぬ」(出典:日本書紀(720)雄略九年七月(前田本訓))
      2. 「おのがもとにめでたき琴(きん)侍り。それにかへさせ給へ」(出典:枕草子(10C終)九三)
    2. 前からあるものや、決まっているものをやめて、新しく別の物にする。とりかえる。交代させる。また、あるものの役目を他のものにさせる。代理をさせる。
      1. [初出の実例]「今より以後、是の土物(はにもの)を以て生たる人に更易(カヘ)陵墓に樹(た)てて後の葉(よ)の法則(のり)と為む」(出典:日本書紀(720)垂仁三二年七月(北野本訓))
      2. 「栲領巾(たくひれ)のかけまくほしき妹の名を此の背(せ)の山にかけばいかにあらむ 一云、可倍(カヘ)ばいかにあらむ」(出典:万葉集(8C後)三・二八五)
    3. ( 「…にかふ」の形で ) ある事のために、…を犠牲にする。…と引きかえにする。
      1. [初出の実例]「身にかえてこの御身ひとつをすくひ奉らむと」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
      2. 「身にかへて思ふ馬なれども」(出典:平家物語(13C前)四)
    4. 飯、菜など器にある分を食べて、また新しく盛り入れる。おかわりをする。
      1. [初出の実例]「御気に入った成らば、かへてまいりませい」(出典:虎寛本狂言・岡太夫(室町末‐近世初))
    5. 古い水を外へ汲み出す。また、汲み出して新しい水を入れる。
      1. [初出の実例]「(はまぐり)にて海をかへ、燈心にて須彌山を引よせんとするごとく」(出典:浄瑠璃釈迦如来誕生会(1714)二)
  3. [ 二 ] ( 変 )
    1. 物事の状態や質を、前と別の物にする。変化させる。
      1. [初出の実例]「そこらのこがね給ひて、身をかへたるがごと成りにたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「この君の御わらはすがた、いとかへまうくおぼせど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    2. 居場所、置き場所などを別の所にする。移す。
      1. [初出の実例]「冝しく処を易(カフ)べし」(出典:大智度論天安二年点(858)三)
      2. 「所かへたるかひなく、むま時許(ばかり)に、にはかにののしる」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    3. あらかじめきまっていた、時や日を変更する。別の日時にする。
      1. [初出の実例]「物さわがしきにより、日をかへて渡らせ給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)

代えるの補助注記

室町頃から、ヤ行にも活用して「かゆ(る)」が使われた。したがって、室町以降の連用形の例は、ヤ行かハ行か明らかでないが、明瞭なものだけ「かゆ」の項にあげた。→代(かゆ)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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