改訂新版 世界大百科事典 「位置推算表」の意味・わかりやすい解説
位置推算表 (いちすいさんひょう)
tables for ephemeris computation
太陽,月,諸惑星の任意時刻における位置を手計算によって求めることを目的に,運動理論を展開,整理して編集した計算数表。運動表ともいい,運動理論と一体のものである。ヒッパルコス(ニカイアの)の太陽表(前2世紀)を最古とする。一般に近代の推算表では,まずケプラー運動による位置を求め,これに他の惑星などによる摂動を加えるという形をとる。太陽と惑星については,フランス暦に採用されたU.J.J.ルベリエの表,その他の国の基本暦に用いられたS.ニューカムの表(木星,土星はG.W.ヒルの表)が有名である。月の運動は複雑であるため表は大部となる。例えば,もっとも精密なE.W.ブラウンの理論の展開式は,黄経832項,黄緯521項,視差253項からなっており,その表は,3冊557ページである。最近,各国の基本暦はコンピューターを用い,運動理論の展開式から直接計算され,あるいは,解析手法も用いず,数値積分によって計算されている。上記の推算表は,その作成時までのすべての観測結果に合うように作られていること,および,それ以後,20世紀の大半に行われた観測の結果が,この推算表によって編纂された基本暦と比較され,その差として報告されていることのために,天文学における役割は重要である。
→天体位置表
執筆者:森 巧
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報