体位ドレナージ(読み)たいいどれなーじたいいはいたん

家庭医学館 「体位ドレナージ」の解説

たいいどれなーじたいいはいたん【体位ドレナージ(体位排たん)】

 体位ドレナージは、いろいろな体位をとることにより、重力を利用して水が低いところへ流れるように、少ないエネルギーで効率よく、たん喀出(かくしゅつ)をうながす方法です。
 慢性気管支炎気管支拡張症など、たんの多い患者さんのリハビリテーション上、重要な治療法の1つです。
●体位ドレナージの方法
 あらかじめネブライザーで、たん溶解剤のエアゾル吸入を行ない、たんを喀出しやすくしておき、手元にたんコップを置いて喀出したたんを入れます。また、バイブレーターを準備しておきます。
 実際の練習方法を図「体位ドレナージの練習法」に示します。
 練習① 楽に座った姿勢で上体を前後および左右に傾けます。肺の上葉(じょうよう)の排たんをうながします。
 練習② ベッドの上に枕(まくら)なしで仰臥位(ぎょうがい)になります。上葉前部、中葉(ちゅうよう)の排たんをうながします。
 練習③ 枕なしで腹臥位ふくがい)になります。上葉背部(じょうようはいぶ)、下葉(かよう)の排たんをうながします。
 練習④ 頭を枕にのせて左側臥位(さそくがい)をとります。左肩を軸にして上体を前後にゆすり、ついで右側臥位で同様の練習をします。上葉、下葉の側部の排たんをうながします。
 練習⑤ 頭を低くして仰臥位になります。中葉、下葉の排たんをうながします。
 練習⑥ うつぶせになり、膝(ひざ)を立てて、臀部(でんぶ)を持ち上げます。下葉の排たんをうながします。
●体位ドレナージを効率よくする補助手技
 体位ドレナージを効率よく行なうためには、ドレナージの際に胸壁(きょうへき)に適度な振動を与えることが重要です。これには、叩打法(こうだほう)(タッピング)と振動法(しんどうほう)(バイブレーション)があります。
 叩打は手のひらで、軽く、痛みを与えない程度にリズミカルに胸をたたきます。振動には、バイブレーター(市販の電気マッサージ器)を用いると便利です。
 叩打やバイブレーションは胸部のみに行ない、肩甲骨(けんこうこつ)や腹部は避けます。胸部の下部から上部に移動しながら、患者さんにゆっくり呼吸をさせながら振動を加えます。これを何度もくり返しながら、せきをさせて、たんを出しやすくします。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「体位ドレナージ」の意味・わかりやすい解説

体位ドレナージ
たいいどれなーじ
postural drainage

気道内分泌物(喀痰(かくたん))を喀出しやすくするための体位をとって行う分泌物の喀出法である。普通、ベッド上に正座した体位からおじぎをするように頭を下げ、両前腕で上半身を支えながら腰を上げる。あるいはベッド上にうつぶせになった体位から身体を乗り出し、床のほうへ向かって上半身を下げる。要するに、頭を低く、腰を高くする体位をとって咳(せき)をするわけである。こうすると、気道内分泌物は重力の助けによって太い気管支へ流れ出し、喀出が容易となる。この体位をとりながら背部を軽くたたいたり、バイブレーターで刺激するとさらに効果的である。喀痰の多い気管支拡張症や肺化膿(かのう)症の患者に適用される。

[石原恒夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の体位ドレナージの言及

【体位排痰法】より

…痰のたまった気管支が頭部より高い位置になるような体位をとり,重力によって痰の排出を促す呼吸器疾患の治療法。体位ドレナージともいわれ,気管支拡張症や慢性気管支炎など痰の多い病気で行われる。通常,痰は下部背中側の気管支にたまりやすいので,痰の排出にあたっては,腹の下にまくらなどを置いて腹ばいになり,腰が高く頭が低く下がるような姿勢をとることが多いが,病変部位がわかっている場合には,そこが上になるような姿勢をとる。…

※「体位ドレナージ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」