日本大百科全書(ニッポニカ) 「偏微分法」の意味・わかりやすい解説
偏微分法
へんびぶんほう
多変数の関数において、ある変数に注目し、残りの変数を固定しておいて、注目する変数で微分することを、この変数について偏微分するという。このような微分演算と、その利用についての理論の体系が偏微分法である。以下では二変数の場合について説明する。関数のうち多変数の関数がある。たとえば、直角三角形で、斜辺zは、直角を挟む二辺x、yによって
と表される。いまここで、x、yのうち、たとえばyは変化しないものとすれば、zはxだけの関数とみることができ、変数xについて微分することができる。これがxについての偏微分である。x=x0,y=y0の近傍で定義された関数f(x,y)は、yを一定値y0に固定して得られるxの関数f(x,y0)がx=x0において微分可能であるとき、(x0,y0)においてxに関して偏微分可能であるといい、この微分係数の値を、
などで表す。すなわち、
これをf(x,y)の(x0,y0)におけるxに関する偏微分係数という。同様に、yに関する偏微分係数も定められる( )。
領域Gで定義されたf(x,y)に対し、その領域の各点でf(x,y)がxに関して偏微分可能ならば、各点に、その点での偏微分係数の値を対応させた関数が得られる。これをf(x,y)のxに関する偏導関数といい、
などで表す。同様にyに関する偏導関数も定義される。たとえばf(x,y)=x2+y2のときfx(x,y)=2x,fy(x,y)=2yである。偏微分の方法は、一変数に関する通常の微分の方法の適用の繰り返しだが、とくに合成関数の微分法については に示す連鎖法則がある。f(x,y)の偏導関数が、さらに偏微分可能のとき、偏導関数の偏導関数が考えられる。たとえば、fxyy(x,y)は、f(x,y)をまずxで偏微分し、次にyで2回偏微分したものを表すものとする。このような偏導関数を高階偏導関数という。一階偏導関数はfx,fyの2個、二階偏導関数はfxx,fxy,fyx,fyyの22=4個、……、k階偏導関数は2k個ある。これらがすべて存在して連続であるとき、f(x,y)はCk級関数であるという。Ck級関数では、偏導関数は、偏微分の順序には関係しない。たとえば、fxy(x,y)=fyx(x,y)で、したがって二階偏導関数のうち異なるものは3個、三階偏導関数では4個、……、k階偏導関数ではk+1個ある。
[竹之内脩]