二つ以上の変数x,y,……の関数fがあるとき,これを一つの変数,例えばxだけに注目し,他の変数は固定して定数とみなし,xの関数として微分することを関数fをxで偏微分するという。関数fをxで偏微分することによって得られる微分係数を変数xに関するfの偏微分係数と呼んで,\(\frac{∂f}{∂x}\),またはfxと書く。例えば2変数の関数f(x,y)について書くと,
がfのxに関する偏微分係数である。これをx,yの関数と考えるときfのxに関する偏導関数という。偏微分係数,あるいは偏導関数を求める手続を偏微分法というが,この偏微分法のことを偏微分と略称することが多い。むしろこの略称のほうがふつうに使われているので,検索の便宜のため偏微分を項目名とした。なお,偏導関数のことを偏微分と呼ぶことがあるが,これは正しい用法ではない。上に述べた\(\frac{∂f}{∂x}\)の定義と同様にして,xを固定してyについて微分することにより,変数yに関するfの偏導関数が定義される。さらに高階の偏導関数の定義や性質などについては,〈微分〉の項を見られたい。
執筆者:伊藤 清三
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