改訂新版 世界大百科事典 「側心体」の意味・わかりやすい解説
側心体 (そくしんたい)
corpus cardiacum
昆虫の頭部にあって,脳とアラタ体との間に位置するほぼ球形のやや青色を帯びた組織で,脳とは側心体神経ⅠとⅡ,アラタ体とはアラタ体神経で連絡している。無翅(むし)類の粘管目以外はすべての昆虫でみられる。大動脈の前端部(心臓)の両側にあるので側心体とよばれるが,左右合一したり(半翅目),アラタ体をとり囲んだり(双翅目カ),アラタ体と前胸腺と合一して環状腺を形成(双翅目ハエ)したりする。側心体神経Ⅰを通じ脳の神経細胞群からの神経分泌物質(前胸腺刺激ホルモン,バーシコン,羽化ホルモンなど)を貯え血中に放出するほか,自身の神経分泌細胞があり,血中トレハロール,血中グルコース濃度の上昇作用のある血糖上昇ホルモン(ゴキブリ)や,脂肪体から血中へのジグリセリドの放出を促す脂質動員ホルモン(バッタ)などを分泌する。さらに側心体からの抽出物は,囲心細胞に作用してセロトニン様物質を放出させ心臓の拍動を上昇させたり(ゴキブリ),利尿,抗利尿作用をもつほか,黒色素胞の拡張なども促す。これらの因子はすべてポリペプチド性のホルモンと考えられている。
執筆者:片倉 康寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報