傾向面解析(読み)けいこうめんかいせき(英語表記)trend surface analysis

岩石学辞典 「傾向面解析」の解説

傾向面解析

地球上の現象を記述し解析する場合に,対象とする量がどのような地域的分布を示しているかが問題となることが多い.量の分布を記述する際には,分布図そのものを最終目的とする場合と,分布図を解析の手段とする場合があるが,いずれの場合もそれぞれの値を等値線(contour)で結ぶ方法が最もよく用いられる.しかしこの方法は観測点の取り方や,等値線の結び方の個人差により,同じ地域のものでも非常に異なった結果が得られることがあるので客観性のある方法が望ましく,傾向面解析はその一つである.岩石の場合には化学組成鉱物組成比重などの測定値からそれらの性質の地域的傾向を知るための手法である.傾向面は数式で表される曲面で,最も普通には多項式(polynomial surface)が用いられる.地理的な座標xyにとり,z変数とすると,一次式ではzabxcy,二次式ではzabxcydx2exyfy2,となり,さらに高次の三次式,四次式を作ることができる.測定値との偏差(deviation)を残渣(residual)と呼び,最少二乗法の計算で残差の二乗和を最少にする面を見出す.面の適合度(goodness of fit)は,

で与えられる.岩石関係では,(1) 単一の稼行岩体内の化学組成,鉱物組成の鉱物の変化[鈴木 : 1962, Whitten : 1959, 1963],(2) 橄欖(かんらん)岩の中の比重と蛇紋岩化の程度の変化,(3) 閃緑岩内の粒度変化,(4) 超塩基性深成岩体中の輝石のEn量の変化,(5) 花崗閃緑岩内の斜長石/カリ長石比率とghost stratigraphyの関係,(6) 堆積岩の性質の変化[Allen & Krumbein : 1962],などの研究が行われた.この方法には,(1) 野外での採集方法が問題で,各測定値のウエイトが同等でないと離れた地点での測定値が大きく結果に影響する.(2) 岩体など地域的に限定されている場合に,計算上ではその地域外の地点の値が得られるので,対象となる母集団をどのように考えるか不明.(3) 多項式の次数が高くなるにつれて計算に必要な観測値の数が急速に増加するので,十分な数の標本が得られないと高次の多項式の計算は意味がなくなる.などの諸問題があり未解決である.

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

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