先天性溶血性貧血(読み)せんてんせいようけつせいひんけつ(英語表記)Congenital Hemolytic Anemia

家庭医学館 「先天性溶血性貧血」の解説

せんてんせいようけつせいひんけつ【先天性溶血性貧血 Congenital Hemolytic Anemia】

[どんな病気か]
 赤血球(せっけっきゅう)の破壊が亢進(こうしん)しているためにおこる貧血で、赤血球自体に異常がある遺伝性球状赤血球症(いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう)、酵素(こうそ)に異常がある赤血球酵素異常症(せっけっきゅうこうそいじょうしょう)、ヘモグロビン異常症(いじょうしょう)、サラセミアなどがあります。
■遺伝性球状赤血球症(いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう)
 先天性溶血性貧血の約70%を占める病気で、常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)します。
 重い貧血をおこすこともあれば、生涯、発病しない場合もあります。
 治療は、脾臓ひぞう)を摘出します。手術後、敗血症(はいけつしょう)をおこすこともあり、5歳未満の子どもには、手術は行ないません。
■赤血球酵素異常症(せっけっきゅうこうそいじょうしょう)
 グルコース6リン酸脱水素酵素の異常やピルビン酸キナーゼの異常が代表的です。
 脾臓を摘出することもありますが、必ずしも効果があるとはかぎりません。対症療法として、赤血球の成分輸血が行なわれます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「先天性溶血性貧血」の意味・わかりやすい解説

先天性溶血性貧血
せんてんせいようけつせいひんけつ

先天的におこる溶血性貧血の総称。溶血性貧血とは、赤血球そのものの寿命が短く、正常より早く消失してしまい、骨髄の造血能力が追い付けなくなって貧血をおこす疾患で、その原因が赤血球自体にあるものと、赤血球以外にあるものとがある。そのうち、赤血球自体に原因のあるもののほとんどが、先天性あるいは遺伝性の赤血球異常による溶血性貧血で、日本人には比較的まれな疾患である。

 遺伝性球状赤血球症は従来、先天性溶血性黄疸(おうだん)ともよばれ、赤血球の中心のへこみがなく球状であり溶血をおこしやすいが、それによる貧血の程度はさまざまで、新生児期に核黄疸をおこす重症のものから慢性貧血として経過するものまである。胆石症を併発するものもある。治療として脾臓(ひぞう)を摘出すると、貧血が軽快する。

 遺伝性非球状赤血球性溶血性貧血は、赤血球の解糖系酵素の先天性欠乏ないし異常が証明されることが多い。これも貧血の程度が軽度から重症まで、種々さまざまである。ピルビン酸キナーゼ欠損症などが含まれる。

[山口規容子]

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