特定の抗原に対して特異的な免疫応答が起こらない無反応性の状態。免疫応答とは、外部から侵入してきた異物、あるいは生体内に生じた異物を抗原として認識し、その抗原に対して特異的に応答することで起こる反応をさすので、こうした反応の起こらない免疫寛容を免疫無応答性あるいは免疫不応答性と表現する。なお、外部から侵入してきた異物を外来性抗原とよび、これには細菌やウイルスなどの病原微生物、移植された組織、毒素や花粉をはじめとするアレルゲンなどが含まれる。また、生体内に生ずるものは生体内抗原とよばれ、これには腫瘍(しゅよう)細胞(癌(がん)細胞)や感染細胞のほかに、自己の細胞やタンパク質など体の組織成分である自己抗原も含まれる。
自己抗原に対して免疫反応が起こらないかもしくは抑制される免疫寛容は、ヒトをはじめとする哺乳(ほにゅう)類が進化とともに獲得してきたしくみで、自己抗原に反応して攻撃しようとする自己反応性T細胞や、自己抗原に対して自己抗体をつくり出すB細胞を、成熟する過程で取り除く、もしくは不活性化して不応答状態にするという巧みなものである。この自己抗原に対する免疫寛容のしくみが細菌やウイルスなどの侵入によって崩れたために免疫応答が起こり、誤って自己抗原に反応し攻撃してしまう病気が自己免疫疾患である。また、口から取り込んだ食物(抗原)に対して過敏な免疫応答が起こらないのは、食物が体内の消化酵素によって分解されて不活性化し、不応答状態にされる(経口免疫寛容)からであるが、この免疫寛容のメカニズムが崩れ、通常は不応答な飲食物を異物として認識し攻撃してしまうのが食物アレルギーである。ほかに、外来性抗原や自己抗原を含む生体内抗原などすべての抗原に対して免疫応答の起こらない病気が免疫不全で、免疫寛容とは区別される。
免疫寛容のメカニズムは臓器移植の拒絶反応抑制やアレルギーの治療などにも応用され、リウマチ治療では、自己反応性T細胞の働きを抑制する経口薬などが開発されている。
[編集部]
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