アレルギー(その他表記)allergy

翻訳|allergy

デジタル大辞泉 「アレルギー」の意味・読み・例文・類語

アレルギー(〈ドイツ〉Allergie)

生体が特定の物質(抗原)に対して抗体を作り、再び同じ抗原が入ってきたときに起こる抗原抗体反応のうち、病的な過敏反応のこと。アレルギー性疾患アナフィラキシーショックなど。
ある物事に対する精神的な拒絶反応。「核アレルギー
[類語](2過剰反応拒絶反応

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精選版 日本国語大辞典 「アレルギー」の意味・読み・例文・類語

アレルギー

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Allergie )
  2. 特定の物質や条件に対し、正常者とは変わった過敏な反応を示すこと。最初、ある物質(抗原)が生体内に入ったとき、それに反応するような物質(抗体)ができ、二度目に同じ物質が生体に入ると、それと抗体とが反応して発赤、浸潤、化膿などを生ずる現象をいう。→抗原アレルゲン
  3. 転じて、ある物事に対して精神的な拒絶反応を示すこと。
    1. [初出の実例]「勧誘だとか説得だとか獲得だとかいう言葉にアレルギーになってるんだ」(出典:妻隠(1970)〈古井由吉〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「アレルギー」の意味・わかりやすい解説

アレルギー
allergy

ギリシア語のallos(違った,変わった)とergon(作用,能力)を合成した語で,オーストリアの小児科医ピルケーClemens F.von Pirquet(1874-1929)が1906年に発表した論文《アレルギー》で用いたのが初めである。〈変化した反応能力〉〈変作動〉という意味で,ある外来性の物質と接した生体が,この物質に対して,それまでとは変わった反応性を示す場合を指す。たとえば,ペニシリンの注射を受けているうちに,この薬剤に対して過敏となり,ペニシリンの注射によってショック死を起こすような場合(ペニシリンショック)や,魚や卵を食べると蕁麻疹(じんましん)が起こるような場合がこれに一致する。また,こうした外来の物質に対して過敏な状態にすることを感作sensitizationという。現在は〈抗原抗体反応が生体に及ぼす影響のうち病的過程を示すもの〉を総括した言葉であると考えればよく,同様に免疫はいちおう〈抗原抗体反応が生体に及ぼす影響のうち有利に作用するもの〉と考えるのが普通である。

アレルギー反応は古くから知られており,前1世紀にはすでにルクレティウスが〈甲の薬は乙の毒〉ということわざを残しているが,現在での食事アレルギーに対する言葉として理解できる。また,ガレノスが150年ころにヤギ乳について同様のことを注意した記録があるし,バビロニアの《タルムード》には卵白によるアレルギー性疾患と思われるものの予防法が書かれている。1565年にイタリア人の医師ボタロは花の花粉によると考えられるアレルギー性鼻炎を記載している。1873年イギリスの医師ブラックリーCharles H.Blackleyは,アレルギー性鼻炎(当時は枯草熱と呼んでいた)を起こす季節以外でも,患者に花粉を吸入させると症状を誘発しうることや,花粉をこのような患者の皮膚に擦り込むと発赤と膨疹を起こすことを発見した。そのころには,カビの吸入や特定の食品を食べて起きる喘息(ぜんそく)や蕁麻疹のようなアレルギー性疾患の因果関係がかなり明りょうになってきた。1749年にはE.ジェンナーが牛痘接種によって天然痘の予防に成功し,1885年にはL.パスツールは微生物の自然発生を否定し,細菌学の基礎を確立した。次いで90年,E.vonベーリング北里柴三郎がジフテリアおよび破傷風の治療血清を開発した。しかし,抗毒素血清による治療は,動物に免疫した血清を用いるため,蕁麻疹,発熱,関節痛,リンパ節腫張,ときにショックを起こすなどの異常な反応をもたらした。これは今日血清病と呼ばれているものであるが,抗血清の注射による〈変じた反応〉として認識された。同年R.コッホは,健康なモルモットの皮下に結核菌を注射すると,1~2週間後にその局所に結節ができ,次いで潰瘍になり,死ぬまで治らないが,結核菌の感染を受けているモルモットでは1~2日後に硬結ができ,やがて潰瘍になるが,しかしこの潰瘍は急速に治ってしまうことを発見した。これは現在コッホ現象と呼ばれているが,初感染の場合と再感染の場合とでは生体の反応が異なり,再感染では抵抗がたかまった反応を示すためである。1902年,フランスのリシェCharles R.Richet(1850-1935)とポルティエPaul Portier(1866-1962)は,イソギンチャクの毒素の研究をしているうちに,初めに少量の毒素をイヌに注射しても死なないが,その結果イヌは毒素に対して非常に過敏になり,その後はごくわずかな量の毒素を注射しても,呼吸困難,下痢,下血などの激しい症状を起こして死亡することを見いだした。そして,これをアナフィラキシーanaphylaxis(anaは反対,無,phylaxisは防御,保護の意で,無防御の状態を指すラテン語)と呼んだ。その後,多くの学者により,その動物にとって異種タンパク質であれば同様の現象が現れることが確かめられた。現在では,アナフィラキシーは抗原抗体反応のうち,抗原投与後急速に発症してショックを起こすものをいっている。03年アルチュスNicolas Arthus(1862-1945)は,ウサギの皮膚にウマの血清をくり返し注射していると,注射局所に発赤を起こし,やがて潰瘍が形成されるようになることを発見した。これは現在,アルチュス反応(またはアルチュス現象)と呼ばれており,注射のくり返しによってかえって反応が増強されることを示すものである。これらの現象は,生体がある種の物質と接触することにより,そのものに対して過敏となり,一定の期間後に再び同一の物質に接触すると,初めとは異なった反応を示すことを物語るものである。このような背景のもとにピルケーは,〈変化した反応能力〉ないしは〈変作動〉という意味にアレルギーという言葉を使ったわけである。その後,免疫化学,免疫病理,生物学などの進歩に支えられて大いに進歩してきた。

アレルギーといっても,けっして単純なものではなく,種々の型がある。かつては即時型と遅延型に2に大別されていたが,最近では以下のようにⅠ型からⅣ型に分けられるようになった。(1)Ⅰ型のアレルギー反応 アナフィラキシー型反応ないし免疫グロブリン中のIgE(immunoglobulin Eの略)と関係が深いことからIgE依存型反応とも呼ばれている。(2)Ⅱ型のアレルギー反応 細胞,組織の破壊ないし融解をもたらす反応。(3)Ⅲ型のアレルギー反応 アルチュス型の反応であり,免疫複合体が主役を演ずる。以上のⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型のアレルギー反応はかつての即時型アレルギーにあたり,いずれも体液性抗体が反応にあずかる。(4)Ⅳ型のアレルギー反応 遅延型アレルギー反応とも呼ばれ,細胞性抗体が反応に関与する。

このようにアレルギー反応には四つの型があるが,ふつう一般にアレルギーといえばⅠ型のアレルギー反応を指すことが多い。そこで以下Ⅰ型アレルギー反応についてやや詳しく説明する。病因となる抗原に生体が触れると(吸入,経口,注射などの経路で),生体はそれに対して抗体を産生するようになる。これらの抗体のうち,免疫グロブリンであるIgE抗体(レアギンreaginともいう)は組織固着性があり,結合組織中に存在するマスト細胞の表面に固着する。そこに病因となる抗原が再び侵入してくると抗原抗体反応がマスト細胞の表面で起こり,その結果,マスト細胞に含まれている顆粒が脱顆粒現象を起こし,顆粒の中に含まれているヒスタミン,SRS-A(slow reactive substance of anaphylaxis),ECF(eosinophile chemotactic factor)などの化学伝達物質を細胞外に遊離する。すると,これらの化学伝達物質の作用によって,血管の透過性の亢進,平滑筋の収縮,腺分泌の亢進,好酸球の遊走などの反応が起こり,その結果,アレルギー疾患が起こると考えられている。Ⅰ型のアレルギー反応に属する疾患としては,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹の一部,アナフィラキシーショック,薬物アレルギーの一部,消化管アレルギー昆虫アレルギーなどがある。

 なおIgE産生細胞は抗原と接触する機会の多い気道や消化管粘膜にかなり多いことが知られていて,アレルギー反応の局在性を暗示している。

アレルギーの原因となる抗原をアレルゲンという。非自己non-selfの物質はすべて抗原として作用する可能性があるが,とくにⅠ型アレルギーの病因的抗原としては,吸入性抗原として室内塵(その主要抗原としてのダニ),花粉(木の花粉としてはスギの花粉,草の花粉としてはイネ科の植物,ブタクサ,ヨモギ,カナムグラなど),カビ類(カンジダ,アスペルギルスアルテルナリアペニシリウムクラドスポリウムなど),動物の毛あか,植物繊維などがある。食事性抗原では,卵白,牛乳,ラッカセイ,そば,サバ,サンマ,たけのこ,ナスなどがある。薬物抗原としては,ペニシリン,セファロスポリン,アスピリンなどが重要である。

Ⅰ型のアレルギー反応には素因(体質)が関与しており,その素因をアトピーという。アトピーとは,アレルギー性疾患の家族歴を有し,正常人では起こさない程度のごく少量の抗原に触れてもIgE抗体を産生する遺伝的な素因とも考えられる。しかし,その遺伝形式は単純なメンデルの法則には従わない。アレルギー性の素因を有する者は全人口の約20%といわれている。また,アレルギー性疾患患者(気管支喘息,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,アトピー性皮膚炎などのうちいずれか一つ以上を有する者)では約50%にアレルギー性の家族歴が認められている(対照では約10%)。また薬物アレルギーの発症は,アレルギー性素因を有する者では,そうでない者に比べて約3倍も高率である。しかし病気そのものが遺伝するのではなく,アレルギー性疾患を起こしやすい体質,すなわちアレルギー性体質が遺伝するのである。アレルギー疾患患者についての広範な調査では,家族にこれらの疾患を有する頻度が高いほど幼少期に発病しやすいことが認められている。

アレルギーやアレルギー性疾患はアレルギー性体質に依存するので,両親がともにアレルギー性体質である場合は,その子にアレルギーが起こりやすい。また動物の免疫血清や異種タンパク質,ワクチンなどの細菌製剤の注射はことにアレルギー性体質をもつ人にとってはアレルギーを起こしやすいので,これらの血清やワクチンが治療上または予防上たしかに必要な場合以外には,なるべくその注射を避けるのがよい。すでに気管支喘息や枯草熱,蕁麻疹などのアレルギー性疾患にかかっている人の場合,アレルギー症状を誘発するアレルゲンを除いて発作の起こらないよう予防しなければならない。これには,まずアレルゲンとの接触を断つことである。すなわち,アレルゲンとなる物質を患者の周囲から取り除いたり,食事性アレルギーの場合にはアレルゲンとなる食物を摂取しないこと。たとえばブタ肉やカキ,サバなどがアレルゲンである場合には,これらを食べないようにする。さらに,アレルギー患者自身がアレルゲンのない場所に移転するか,または転地するのも一つの方法である。

アレルギー性疾患には気管支喘息や枯草熱,蕁麻疹,血清病などの多数の病気があるが,これらの病気はだいたい共通の療法で効を奏する。すなわち,いわゆる抗アレルギー剤ないし療法が有効である。気管支喘息の発作を急速に軽快させる薬剤は,主として自律神経系に作用する薬剤で,交感神経興奮剤と副交感神経麻痺剤が有効である。アレルギー性疾患一般には抗ヒスタミン剤ステロイド剤も有効である。現在では,マスト細胞からの化学伝達物質の遊離の機構が詳細に解明されているので,それを阻止するような,たくさんの薬剤が開発されている。これには吸入薬,点鼻薬等がある。また回避できない病因的抗原に対しては減感作療法も用いられる。
抗原 →抗体 →免疫
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六訂版 家庭医学大全科 「アレルギー」の解説

アレルギー
Allergy
(遺伝的要因による疾患)

アレルギーとは

 アレルギーとは本来、体の外から入ってきた細菌やウイルスを防いだり、体のなかにできたがん細胞を排除するのに不可欠な免疫反応が、花粉、ダニ、ほこり、食べ物などに対して過剰に起こることをいいます。過剰な免疫反応の原因となる花粉などを、アレルゲンと呼びます。

 アトピー性皮膚炎気管支喘息(きかんしぜんそく)花粉症を含むアレルギー性鼻炎などが代表的なアレルギー疾患です。理由ははっきりしませんが、日本を含む先進国で患者が急増しています。

アレルギーの原因

 アレルギーも生活習慣病などと同じ多因子遺伝性疾患で、複数の遺伝子が関与するアレルギーになりやすい体質をもつ人が、アレルゲンに暴露することにより発症する疾患と考えられています。遺伝子が短期間に変化することは考えられませんので、先進国でアレルギーが急増している主要な理由が環境要因であることは間違いないでしょう。

 たとえば、日本でスギの植林が盛んに行われたために、最近になってスギ花粉というアレルゲンが環境中に増え、スギ花粉症患者増加につながっています。また、気密性が高まった屋内でダニが増えやすい環境になっています。さらに、乳幼児期に細菌などが少ない清潔な環境にいると将来、アレルギー疾患にかかりやすくなる(衛生仮説と呼びます)ことも報告されています。そのほか、私たちの身のまわりに存在する化学物質の急増が関係しているとの指摘もあります。

 一方、アレルギー体質に関与する遺伝子も明らかになり始めました。

アレルギーに遺伝子が関与する証拠

 アレルギー疾患と診断された人の血縁者には、アレルギー疾患が多いことがわかっています。たとえば、日本人のスギ花粉症を対象にした疫学調査で3親等以内にスギ花粉症のいる人は51.7%、いない人は39.2%でした。また、双生児における気管支喘息の一致率は、一卵性双生児で20.0%、二卵性双生児で4.9%でした。

 一卵性双生児では、その遺伝子は100%一致していますが、二卵性双生児では兄弟姉妹間と同じで50%が一致しています。一卵性双生児の喘息発症の一致率が高いことは、遺伝子が気管支喘息の発症に関与していることを意味する一方、100%遺伝子が一致しているにも関わらず、発症の一致率が20%しかないことは、遺伝要因よりも環境要因が大きいことを示しています。

アレルギーの仕組みと関与する遺伝子

 血液中には白血球があり、そのなかにT細胞と名付けられたリンパ球があります。T細胞はTh1細胞とTh2細胞に分化しますが、ヒトの免疫反応はTh1とTh2のバランスの上に成り立っていると考えられています。

 Th1はインターロイキン2(IL­2)やインターフェロンガンマ、Th2はIL­3、IL­4、IL­5などのサイトカインという物質を作ります。アレルギー疾患の人はTh2がTh1よりも優位で、アレルゲンが入ってくるとTh2由来のサイトカインは、B細胞を活性化させ、そのアレルゲンに対する免疫グロブリンE(IgE)を作ります。

 病院でアレルギーの原因となる物質を調べることがありますが、これは血液中に存在するダニや花粉などに対するIgEの量を測定しているのです。このIgEがアレルゲンと反応すると、血液中の肥満細胞(ひまんさいぼう)と名付けられた細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出されます。これが鼻の粘膜、皮膚、気管支に起こると、それぞれアレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎気管支喘息を発症するのです。

 現在、これらのアレルギーに関与する遺伝子を見つけだす研究が世界中で行われていて、どの遺伝子がアレルギー体質に関与しているのかが明らかになり始めました。

羽田 明

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレルギー」の意味・わかりやすい解説

アレルギー
あれるぎー
allergy

自己を外敵から守る仕組みであるはずの免疫が、本来は無害なはずの他者に対して反応することにより、体にとって不利益な症状が引き起こされる現象。この免疫反応は外部の抗原と、体内でつくられた抗体が結合することによりおこるが、アレルギーのきっかけとなる抗原のことを「アレルゲン」という。アレルゲンは体内に侵入する意図をもっていないので、体の表面(皮膚と粘膜)に付着している状態となる。どの場所でアレルギーがおきているか、何をアレルゲンとして反応がおきているかによって、アレルギー疾患はそれぞれ名前がついていて、それぞれに異なる症状がみられる。場所による疾患名としては、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、気管支喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、口腔(こうくう)アレルギー症候群、消化管アレルギーがあり、アレルゲンによる疾患名としては、食物アレルギー、花粉症、ダニアレルギー、薬物アレルギー、金属アレルギーなどがある。

 アレルギーがおこる原因は、アレルゲンの存在によるという考え方から始まり、皮膚・粘膜の慢性炎症があるために、過敏性がみられているという理解に進んでいる。アレルギーの治療は、症状を緩和させるための治療薬を用いる方法から始まり、症状がおこらないように普段から予防しておく方法が中心となってきている。また対処法は、アレルゲンをみつけて除去するという方法から始まり、最近ではアレルゲンに慣れて免疫反応がおこりにくくなることを目ざす、アレルゲン免疫療法が試みられてきている。

 歴史的には、アレルギーという用語は1906年にピルケが最初に用いたといわれており、語源はギリシア語のallos(変じた)とergo(作用)に由来していて、本来生体の防御機構である免疫反応が「変じて」、生態に有害な反応として「作用」している病的状態ととらえられていた。1920年にはコーカArthur Fernandez Coca(1875―1959)が特定の物質に対する過敏症に対して、「不思議な」という語源からアトピーatopyと命名した。さらに1963年、ゲルPhilip George Houthem Gell(1914―2001)とクームスRobert Royston Amos Coombs(1921―2006)は、免疫反応の機序(メカニズム)に応じてアレルギーを4型(Ⅰ~Ⅳ型)に分類したが、現在の免疫学でその機序として明確に説明しうるものはⅠ型反応のみである。1966年には石坂公成(きみしげ)(1925―2018)、石坂照子(てるこ)(1926―2019)が免疫グロブリンE(IgE)抗体を発見した。Ⅰ型反応はIgE抗体が関与した「即時型アレルギー」といわれ、これがアレルギーの機序の中心的役割を担うとされている。

[高増哲也 2021年12月14日]

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百科事典マイペディア 「アレルギー」の意味・わかりやすい解説

アレルギー

1906年オーストリアのピルケClemens Peter Jodanm von Pirqetの提唱した概念で,生体がある病気を経過したり,異種物質で処置されたのち,〈反応能力の変化〉をきたすことを意味した。その後アレルギーの概念は種々変改されたが,一般に,ある抗原によって感作された個体が,再びその抗原に出会った際,その抗原に対して速やかに強い反応を起こした結果が,生体に対して防御的に働くのではなく,生体に障害を与えるという一連の免疫反応。→アレルギー性疾患
→関連項目アナフィラキシーアレルゲン化学物質過敏症仮性クループ金属アレルギー抗原抗体反応細胞性免疫特異体質パッチテストリウマチ

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知恵蔵 「アレルギー」の解説

アレルギー

抗原にさらされた時、個体が正常よりも過敏な反応を起こし、組織障害を起こした状態。過敏症ともいう。アレルギーの原因になる抗原をアレルゲンという。アレルギーは即時型アレルギーと遅延型アレルギーに大別される。即時型アレルギーは抗原の刺激を受けて、数分から数時間で反応が現れる。反応には抗体が関わるので、体液性アレルギーともいわれ、I〜III型に分類されている。遅延型アレルギーは24〜48時間後に生ずる。感作リンパ球が関わる細胞性免疫が関与し、IV型アレルギーとも呼ばれる。I型アレルギーはIgEという抗体が関係しており、気管支喘息、アレルギー性結膜炎、全身性アナフィラキシーショック、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胃腸炎、花粉症などがある。II型、III型アレルギーには多くの自己免疫疾患が含まれる。IV型アレルギーでは結核の病巣形成などがその代表例で、接触性皮膚炎などもIV型アレルギーによって起こる。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレルギー」の意味・わかりやすい解説

アレルギー
allergy

生体が,侵入してきたある異物 (抗原) によって感作されて,その異物に再度接触した場合に過敏な反応を示すことがある。この反応を抗原抗体反応という。本来,防御的に作用する機構であるが,これが過剰に反応しすぎて生体に不利に働き,病的な過程を示す場合を,アレルギーという。アレルギーはギリシア語で変った働きという意味で,1906年にオーストリアの小児科医 C.ピルケが初めてアレルギー理論を提唱した。抗原に接触してから反応が現れるまでの時間によって,即時型と遅延型に分けられ,即時型反応としては,アナフィラキシー,アルチュス現象,鼻アレルギー,アトピー性皮膚炎,気管支喘息,血清病などが,遅延型反応には,ツベルクリン反応などが属する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

妊娠・子育て用語辞典 「アレルギー」の解説

あれるぎー【アレルギー】

語源はギリシャ語。「変わった(変えられた)働き」です。関係しているのは、人間の免疫システム。免疫は本来、人の体を守る仕組みですが、ときに過剰反応し、不快な症状を引き起こすことがあります。それがアレルギーです。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

栄養・生化学辞典 「アレルギー」の解説

アレルギー

 ある種の抗原にさらされた個体が再びその抗原に接したときに有害な免疫反応を起こす過敏な状態.環境因子(ダニ,花粉など),薬物などに対する過敏の状態をいう場合が多い.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

とっさの日本語便利帳 「アレルギー」の解説

アレルギー

異物が生体に侵入すると免疫応答が起こり、異物を体外に排除しようとする。この防衛反応が過剰に働き、自己の組織にも障害を及ぼす状態。その原因物質がアレルゲン。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアレルギーの言及

【過敏症】より

…質的な異常反応は大きく次の三つに区別することができる。すなわち,(1)薬物に対する中毒作用,(2)薬理作用として普通では反応しない少量の物質(薬物など)に対して反応を示すこと,(3)免疫学的にアレルギーとしてあらわれてくる場合である。このうち,薬理作用としての過敏症は,ある薬理作用が非常に強く出る場合(微量な安定剤で強い眠気があらわれる,または常用量で身体の安定性を保っていられなくなることなど)をいう。…

【気管支喘息】より

…自律神経異常説は迷走神経緊張説(副交感神経の緊張),局所迷走神経緊張説(局所とは気管支をさす),β受容体遮断説(交感神経β受容体の機能低下),最近ではプロスタグランジン説(気管支を収縮させるプロスタグランジンF2αと拡張させるプロスタグランジンEの失調)など気道過敏性を究明する方向に発展していった。 一方,20世紀に入ると,ピルケーClemens F.von Pirquet(1874‐1929)が提唱したアレルギーの概念が導入され(1906),アレルギー説が大きくクローズアップされてきた。アレルギーの本態が抗原抗体反応に基づく過敏現象であることが解明されるや,それまで行われていた枯草熱の研究などをふまえて,気管支喘息における抗原,あるいは抗体の研究が精力的に進められていった。…

【寄生虫アレルギー】より

…寄生虫とくに蠕虫(ぜんちゆう)感染者や寄生虫を取り扱う機会の多い研究者などにみられるアレルギー反応をさす。寄生虫によるアレルギー症状をはじめて認めたのはゴルトシュミットRichard Benedict Goldschmidt(1910)で,ウマカイチュウの研究をしている動物学者の中に結膜炎,頭痛,手指の腫張や痛み,激しい咳発作や喘息(ぜんそく)症状を示す者があることを記載している。…

【抗体】より

…また,SRS‐A(slow‐reactive substance of anaphylaxisの略)とよばれる物質も生成し放出される。いずれも強力な炎症誘起物質であり,血管の透過性をたかめ,平滑筋の収縮を促すことにより,過剰に反応がおこれば花粉症喘息(ぜんそく)等のアレルギーの原因となる。 免疫複合体中の抗体が補体系の第一成分と結合すると,九つある補体系の全成分が順次活性化される。…

【蕁麻疹】より

…浮腫は真皮の上層にみられるが,それは肥満細胞からヒスタミンが遊離され,その作用によって血管の透過性が増すため血漿が組織内へ流出して生じたものである。この肥満細胞からのヒスタミン遊離はIgE抗体(レアギン)と抗原とによるI型アレルギーによってひき起こされるが,これとは別にヒスタミン遊離物質が直接肥満細胞に作用してもヒスタミンの遊離が生じる。したがって,I型アレルギーによって蕁麻疹が生じるのは確実であるが,他方,すべての蕁麻疹がI型アレルギーによって起きるとはいえない。…

【免疫】より

…E.メチニコフは,感染を受けた生体から採った白血球やマクロファージ(大食細胞)は,病原微生物を貪食する能力が高まり,それが病原体に対する防御反応として働くと考えた。マクロファージの貪食作用のみを重視したメチニコフの考えは,当時の体液説の前では必ずしも説得力を発揮できなかったが,のちにいわゆる細胞性免疫として一括される,遅延型アレルギー,移植片拒絶反応,接触過敏症,リンパ球による標的細胞破壊など,抗体によらないで免疫系細胞によって起こってくるさまざまな反応が記載されるにおよんで,免疫なる現象のもう一つの大きな側面として再び浮かび上がってくる。
[新しい概念の確立]
 こうして,免疫の重要な二つの側面,抗体による体液性免疫と細胞が直接働く細胞性免疫についての研究が進展し,それぞれについて重要な発見が相次いだ。…

【薬物過敏症】より

…ドイツ語ではÜberempfindlichkeit)と名づけた。やがて,ベーリングが観察した現象は毒素を抗原としたアレルギー反応にもとづくものであることが判明した。現在,欧米ではhypersensitivityはアレルギーとほぼ同義語に用いられる場合が多い。…

※「アレルギー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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