日本大百科全書(ニッポニカ) 「八甲田トンネル」の意味・わかりやすい解説
八甲田トンネル
はっこうだとんねる
東北新幹線七戸(しちのへ)十和田―新青森間の長さ2万6455メートルの複線鉄道トンネル。掘削断面は約81~84平方メートルで、複線断面の陸上トンネルとしては世界最長である(2012)。1998年(平成10)着工、2005年(平成17)貫通し、2010年12月に供用開始した。青森県中央部に位置する八甲田山系の北東部を貫くもので、上北郡七戸町に東坑口、青森市に西坑口がある。トンネルの平面線形(路線の平面的な形状)は入口付近および出口付近に半径8000メートルの曲線があり、中間部はほぼ東西方向の直線となっている。縦断線形はおおよその中間点にあたる行政境界を頂点とした10‰(パーミル)勾配(こうばい)となっている。
地質はトンネル中央付近に背斜軸をもつ大きな褶曲(しゅうきょく)構造をなし、トンネル中央部付近にもっとも古い地層が、その両端には古い地層を覆うようにして新しい層が分布している。施工方法はコンクリート吹付けとロックボルト併用による山岳NATM(ナトム)(New Austrian Tunneling Method)工法で、軟岩区間は機械掘削とし、堅岩区間は発破(はっぱ)掘削とした。
掘り出したズリ(土石)に含まれる鉱化変質岩のなかの黄鉄鉱等は、掘削後に水や空気中の酸素に触れて長い間放置されると酸性水を生成し、掘削土中の重金属を溶出させて周辺環境に影響を及ぼす恐れがあった。鉱化変質岩と判断されたズリは、雨水の滲入(しんにゅう)を防ぐ遮蔽(しゃへい)型の土捨て場で処理している。
[吉川大三]