改訂新版 世界大百科事典 「分区園」の意味・わかりやすい解説
分区園 (ぶんくえん)
公共団体や民間団体が管理する土地を一定の区画に区分して,これを一定期間住民に貸付けし,農作物,草花の栽培を行わせるものである。市民農園,小菜園ともいわれる。1830年代にライプチヒの医師D.G.M.シュレーバー(1808-61)によって児童の保健のために必要な週末利用の施設として提唱されたことからシュレーバー菜園ともいわれる。その後,戦時においては食糧自給の場としても評価された。近年は生産的役割が薄くなり,都市住民のための保健,レクリエーションの場として西ヨーロッパでは重要な都市緑地の一つとなっている。イギリスにおいてはアロットメントallotment(allotment garden),ドイツではクラインガルテンKleingartenといわれている。日本においては1930年代に休閑地利用の自家菜園運動として,東京では大泉市民農園,羽沢(はざわ)公園分区種芸園,大阪では城北公園農園などが設けられたが戦後の食糧事情の改善,空地の減少とともに消滅していった。しかし近年に至って庭を持たないアパート居住者の増加,屋外レクリエーション要求の増大,植物や土に親しむ機会の必要性などから,民営,公営のレジャー農園,貸農園,市民農園が設置されるようになってきた。これらの分区園のうち公営のものは制度的には都市公園法施行令による公園内施設に相当するものであり,敷地面積が5ha以上の都市公園においてのみ設けることができるとされていた。都市公園内に分区園を設置した例に西武庫公園(尼崎市,管理者は兵庫県),鶴見緑地(大阪市)などがある。82年度からは市街化区域内農地の利用の一環として,面積0.5ha以上の分区園を主体とする都市公園(分区園緑地〈タウンズ・ファーム〉)の整備が始められている。
執筆者:井手 久登
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報