分捕(読み)ぶんどり

精選版 日本国語大辞典 「分捕」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐どり【分捕】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ぶんどること。特に、戦場で敵の武器や軍用品、または首などを奪い取ること。また、奪い取ったもの。
    1. [初出の実例]「或は分どりしてかへる物もあり」(出典:平家物語(13C前)四)
  3. 戦争中、交戦権によって財産を取得すること。特に陸戦で、軍隊が国家の責任で敵国の財産を取得すること。〔五国対照兵語字書(1881)〕

分捕の語誌

中世合戦において使用された武者言葉であり、特に兜首および甲冑武器を奪うことを手柄としたもので、「分捕高名」につながる。これに対し、敵地に入って財物を掠奪する「乱捕(らんどり)」は、手柄ではなかったが、「分捕」とともに合戦中の敵に対する行為として認められていた。しかし、後には、「乱捕」も手柄として数えられ、「分捕」と見なされるようになった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「分捕」の意味・わかりやすい解説

分捕 (ぶんどり)

中世,戦場で敵の武器,武具または首などを取ることをいう。《平家物語》にも〈或は分捕してかへるものもあり,或は痛手おうて腹かききり,河へ飛入ものもあり〉とあり,その用例は広く軍記物に散見する。ちなみに野伏(のぶし)などが活躍した後世の合戦では分捕勝手といって,単なる戦利品の略奪行為を意味するようになったが,元来は自己の戦功を示す証拠品として分捕した敵の首級とともに具足などを差し出す行為を意味した。それゆえに分捕は分捕高名などとも表現された。〈分捕高名と言ふ事は,其の首の一人の分を一人して取りたるを分捕高名と申すなり。然れば具足以下悉く取りたるを申すなり。今どき人の喉輪わきつめ以下とりて,首をば得取らで分捕などと申す事おかしき事也〉とある《岡本記》(1544年奥書)の記載は,分捕の本義を知る上で興味をひく。分捕った品々は一度上納され,後に戦利品として当事者に褒美として下賜されるのがならわしであった。武器,武具が消耗品でありながら,供給がいまだ十分でない中世においては,戦闘具の補充としてその価値も大きく,必要な手段とされた。
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