国際法上の用語としては,戦争において害敵手段の行使や傷病者・捕虜・文民の取扱い等に関する交戦国の種々の権利の総称。現実に交戦権を行使するのは交戦資格を有する者で,交戦資格は交戦国の軍隊構成員(正規の軍人が指揮する軍艦や軍用航空機を含む)のほか,一定の条件を備えた民兵隊,義勇隊の構成員に認められてきたが,さらに今日では交戦国の組織的抵抗運動団体や自決権のために闘う民族解放団体の構成員にも認められると解しうる。なお,日本国憲法 9 条 2 項は〈国の交戦権はこれを認めない〉と規定している。ここでの交戦権の意味は上記のことを指すとする説もあるが,むしろ国の戦争を行う権利と解するのが多数説である。
執筆者:藤田 久一
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日本国憲法第9条2項は、「国の交戦権は、これを認めない」と規定する。その意味については学説上、国が戦争を行う権利とする説と、戦時において国が戦時国際法上有する権利とする説が対立しているが、前説は第1項の趣旨と重複するところから、後説が通説である。後説の意味での交戦権には、交戦国に対して国際法が認める範囲で戦争行為を行うこと、たとえば軍事目標の攻撃、領域の占領、捕らえられた自国戦闘員が捕虜待遇を受ける権利など、中立国に対しては中立法規を遵守せしめること、たとえば封鎖を尊重させ、公海上で中立船を臨検することなど、が含まれる。交戦権は、交戦資格を有するもの、すなわち正規軍の構成員およびそれに指揮される軍艦・軍用航空機によってのみ行使しうるが、それ以外にゲリラ兵や敵の侵入に抵抗する市民も、一定の条件が整えば、捕らえられたときには捕虜資格が認められる。
[松井芳郎]
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