日本大百科全書(ニッポニカ) 「分散物流」の意味・わかりやすい解説
分散物流
ぶんさんぶつりゅう
自然災害などの緊急事態に備えて、商品の輸送手段や在庫保管拠点を複数用意しておこうとする考え方。2011年(平成23)3月の東日本大震災では、ものの生産自体に支障がなかった場合でも、配送ルートの寸断や保管倉庫の被災で、被災地を含む広域への日用品などの供給が滞る事態に陥った。この反省から、本社・本部機能の分散、生産・調達拠点の分散、電算処理施設やデータセンターの分散と並んで、分散物流が重要視されるようになった。大震災後、多くの流通大手企業が分散物流網の構築に取り組んでおり、効率優先の物流網の集約から、リスクに備えた分散物流への転換が進んでいる。
分散物流では、高速道路を使ったトラック輸送だけでなく、鉄道輸送や船舶輸送など複数の輸送手段を想定、道路についても複数のルートを用意し、港ならば日本海側と太平洋側の複数港の利用を想定するなど、輸送ルートの選択肢を増やして非常時に備える。さらに複数ルート上の重要拠点に保管倉庫を分散するほか、生産拠点と保管・備蓄拠点を分けるなどの安全策をとる。また、電源喪失に備え、荷物の搬出入などを電動で行う倉庫や配送拠点などについて、人手やフォークリフトなどでも稼働するようにシステムを変更する。ただし、分散物流の採用には、平時における生産性の低下につながるという問題点もある。
[編集部]