日本大百科全書(ニッポニカ) 「初漁祝い」の意味・わかりやすい解説
初漁祝い
はつりょういわい
漁業儀礼の一つ。地域によって初取祝い、エビス祝い、クロヤキ祝いなどともよばれる。年の初めとか漁期の最初の出漁に際し、初穂の魚をエビスその他の漁の神や地域の鎮守神、船霊(ふなだま)などに供えて祝う習わしである。初魚は単にハツウオとよぶほかに、カミノウオ、カミノヨ、ミヤイウオ、エベスなどとよばれ、海のかなたからの寄り物、寄り神として神聖視された傾向がうかがえる。静岡県旧安倍(あべ)郡や賀茂郡では初漁のカツオは切り身にして村中に分ける風があり、これをニイヤイとかオニアイとかいった。これは新饗(にいあえ)のことで、古くは神と人とが初魚をともに食べて祝うという神人共食の考えがあったことを示すものだろう。また、カツオの心臓をホシなどと称し漁の神の供物とした所も多く、狩猟の儀礼と対比され注目される。
[神野善治]
『柳田国男編『海村生活の研究』(1949/復刻版・1975・国書刊行会)』