日本大百科全書(ニッポニカ) 「利益図表」の意味・わかりやすい解説
利益図表
りえきずひょう
profit graph
企業活動の損益がどこで分岐するかを示す図表。CVP関係を基礎にした利益管理の用具で、損益分岐(点)図表ともいう。CVPはそれぞれ、費用cost=C、生産量volume=V(計算では下記のように売却した収益としての売上高sales=Sを用いる)、および利益profit=Pをさす。利益図表作成の前提は、損益計算書から得られるCVPデータと、それを用いた損益分岐点break-even point(損失がなくなり利益が発生する売上高S0)の計算である。データのうち重要な点は、費用(総費用)を固定費(生産量の増減に関係なく発生するもので、賃金、減価償却費、支払利子などが該当する)と変動費(生産量の増減に対応して変化するもので、原材料費、動力費などが該当する)に二大分し、しかも後者は生産量の増減に比例して変動する比例費(生産量単位当りでは一定)とみなすことである。いま、ある期のCVPデータが次のとおりであったとする。
売上高S(@¥200×1万単位)
¥2,000,000
変動費V(@¥120×1万単位)
¥1,200,000
固定費F
¥600,000
利益P
¥200,000
損益分岐点を求める公式は、次のとおりである。なお、この式のV÷Sを変動費率という。
S0=F÷(1-V÷S)
この式に前のCVPデータを代入すると、損益分岐点は150万円、そのときの生産量は7500単位となる。これらを図示すると利益図表になる。
経営者はこの図を利益管理に使用する。まず、利益を生み出す状態に企業を保つには、生産量(すなわち販売量)を7500単位以上(目標利益(希求利益、必要利益P0)を設定すれば、それを実現するに必要な生産量ないし売上高S1は、図または次式で求めることができる。
では右側)にするよう努めなければならない。その場合、 S1=(F+P0)÷(1-V÷S)
また、一定の売上高S2のときに生じる損益P1は、同様にして図または次式で求めることができる。
P1=S2×(1-V÷S)-F
利益図表は簡明で有益な用具であるが、CVPデータが実在しない新製品の場合には仮定ないし予想データを用いなければならないことと、変動費を比例費として扱うため損益分岐点の近傍から離れると誤差が大になるとの2点に留意しなければならない。したがってこのような利益図表は、短期の利益管理(操業管理)の用具である。
[森本三男]