利益図表において収益線と総費用線とが交わる点である。この点は収益と費用がちょうど等しくなる企業の業務活動の水準を示す。すなわち,実際の業務活動がこの点に対応する水準に達しなければ企業は損失をこうむり,この水準を越えれば利益を得る。
ところで利益図表とは,一定期間における企業の業務活動,収益,費用,および利益の間にある関係を分析的に図示したものである。これを損益分岐図表または損益分岐点図表あるいは経営者図表とよぶこともある。この図表には各種のものがあるが,図に示す基本形式が最も一般的である。金額を縦軸,業務活動を横軸とする平面上に,費用を固定費と変動費に分けて固定費線と総費用線を描き,さらに収益線を描いたものである。業務活動はふつう売上高または販売量で表される。損益分岐点の右側の収益線と総費用線にはさまれた部分は利益を表し,この点の左側の同様の部分は損失を表す。
損益分岐点の売上高と販売量は,利益図表の損益分岐点に対応する横軸の値を読み取ることによって得られる。しかし,これらはつぎの公式によりいっそう正確かつ容易に得ることができる。なお,変動費率とは変動費の売上高に対する比率であり,限界利益率とは限界利益の売上高に対する比率である。
なおこれらの公式から,目標利益を達成するために必要な売上高と販売量を求める公式,および任意の売上高または販売量のもたらす利益を求める公式が導かれる。すなわち,
執筆者:長屋 英郎
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企業経営において、利益も損失も出ない分岐点のこと。BEPと表記する。すべての企業経営は、活発な活動水準(製造・販売活動の水準)では利益が発生し、逆に低調な活動水準においては損失が発生するものであるが、そのような二つの状況の境界線があり、ここでは利益も損失も発生しない。このような損益の分岐する点、すなわち損益ゼロ点を損益分岐点という。損益分岐点は、企業の短期利益計画にとって有効な指標で、損益分岐点を基礎に置いた分析手法を、一般にCVP分析cost-volume-profit relationship analysisとよんでいる。
損益分岐点は、基本的には活動水準を売上高か販売量に求め、原価(費用)を固定費と変動費に区分することによって次のように計算する。
なお、算式の「限界利益」は、売上高から変動費を控除した利益概念で、「貢献利益(貢献差益)」と称されることもある。
損益分岐点は、企業活動をどの程度の水準に上昇させれば利益が発生するかのポイントを知る指標に用いられ、企業がその水準を目標としているということではない。現実の短期利益計画における分析においては、現状もしくは予算の売上高(あるいは販売量)と損益分岐点のそれとの差を確認する安全余裕度分析、目標資本利益率を達成する売上高(あるいは販売量)を試算する目標利益達成点分析などに展開され、予算編成等の短期利益計画の基礎データとして活用される。
また、産業もしくは企業の現在の経済環境を確認するものとして損益分岐点比率がある。これは、損益分岐点活動水準を分子に、現状の活動水準を分母とした比率で、100%未満であることが適切であり、100%を超えるとかなり悪い経済環境にあるとされる。損益分岐点比率は、定期的に経済関係紙上において分析し報道されている。
[東海幹夫]
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