改訂新版 世界大百科事典 「制御システム」の意味・わかりやすい解説
制御システム (せいぎょシステム)
control system
プラントや工場などの運転・操業を計画どおり円滑に行うことを目的として導入された制御装置の体系的集合。プラントや工場は多くのプロセスの集りである。各プロセスは原料や中間製品から中間製品や最終製品を作るプロセスであったり,製品の移動や検査のプロセスであったり,種々である。時代の進展とともにプラントや工場は大規模かつ複雑化してきたが,これを支えてきた制御システムの発展は目ざましいものがある。以下ではその発展の過程を簡単にたどる。
自動制御が導入されはじめた時期には,自動制御装置は少数であって,かつプラントに分散配置されており,互いの関連はほとんどなく,システムを構成していなかった。自動制御装置が導入されるまでは操作員がいちいち手動で制御していたのであるから,そのメリットは大きかったが,操作員が不要になったわけではない。操作状態や製品の種類などに応じて自動制御装置の設定値を変更する必要があるが,これを行うために操作員をプラントに配置していた。
プラントや工場が大型化されはじめた時期に制御システムに大きな変革が生じた。大きなプラントは多くの自動制御装置を用いて初めて運転が可能となるのであるが,これらをプラントに分散配置しておくと操業条件の変更に柔軟に対処できない。そこで,自動制御装置のうち操作部のみをプラントに残して,調節部を中央計器室とよばれる1ヵ所に集中配置した。これにより,プラントの運転状態が一目瞭然となり,少数の操作員で円滑に運転できるようになった。中央計器室に集められた多くの自動制御装置(調節部)は系統だって配置されており,まさに制御システムとよぶにふさわしい形態となった。ただ,その日の操業計画に応じた設定値の変更は操作員が行っており,操作員は制御システムの重要な要素としての役割を担っていた。
プロセスコンピューターとよばれる計算機が中央計器室に導入され,自動制御装置(調節部)と接続され,制御システムはさらに充実した。プロセスコンピューターは導入の初期はプラントの運転状況の記録の仕事をするのみであったが,やがて各自動制御装置の設定値のセットを行うようになり,制御システムは階層構造をもつこととなる。やがて,制御システムは生産管理システムと連結され,さらに生産管理システムは経営情報システムと連結され,制御システムは企業における大規模な階層的情報システムの下部構造の役割を果たすようになる。
工場やプラントの大規模化,高級化がさらに進むにつれ,中央計器室は複雑化して能率の低下が目だつようになった。そこで幾つかの計器室を作り機能分散を図ることが行われるようになった。これは危険の分散にもつながる。制御システムは今,集中から階層的分散への道を進みつつある。
執筆者:得丸 英勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報