翻訳|efficiency
経営学では,一定の目的を達成し,期待される結果をもたらすために行われる諸活動の評価基準の意味で効率という。工学や物理学ではefficiencyを効率と訳し,能率はモーメントの訳語とされる。
経営学では能率を,目的もしくは結果の達成度合を示す有効性effectivenessの概念とほぼ同義的に使われることもあれば,それと区別して使われることもある。能率は,ある目的ないし結果を達成するためにどれほどの努力・時間・経費がかけられたかが重要であるのに対して,有効性ではその点がほとんど顧慮されない。すなわち,払った努力,費やした時間や経費に比して得られた結果が思わしくなければ,非能率的とされ,それなりの結果が得られたときでも,もっと努力・時間・経費が少なくてすむ,より能率的な方法がないかどうかが問題とされる。有効性が,望んだ目的や結果をどこまで満たしたかという〈程度の問題〉であるとすれば,能率は,どれくらいの資源を費消してどこまで望んだ目的や結果を達成しえたか,また複数の方法のうち,いずれのほうが少ない資源の投入で大きな産出効果をあげることができるかという〈比較の問題〉であり,投入(インプット)と産出(アウトプット)の比率に着眼する。
このように,能率評価の要点を投入と産出の比率に見いだす観点からすると,その厳密な適用範囲は,投入と産出のいずれもが測定可能な機械工学技術的な分野に狭く限られてしまいそうにみえるが,現実にはもっと広く,目的と手段関係が成り立つ人間行動および社会的諸関係についても適用して,能率評価がなされる。こうした能率概念の適用にあたって大きな意義をもつのが,F.W.テーラーの名とともに知られる科学的管理法であり,企業組織のみならず,公行政の領域でも,能率の価値の重要性が強調され,能率測定の実用的方法を開発する必要が繰り返し主張されてきた。しかし能率価値を過大視することに対する抵抗も強く,能率至上主義によって他の諸価値が不当に軽視されることにならないかとする批判的見解もおりにふれ主張される。能率測定に必要以上の精度を求めることも,また,測定結果に対してその精度に見合う以上の意味づけを行うことも避けなければならない。能率にはつねに客観的側面と規範的側面があることを強調したアメリカの代表的行政学者ワルドーD.Waldo(1913- )は,〈能率の記述的ないし客観的なとらえ方は,自覚的に設定された諸価値の枠組みの範囲内でのみ妥当であり有効である〉と注意を促している。
執筆者:今村 都南雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生産活動の技術的有効性を示す指標で、通常は標準と実績を対比して百分比で示す相対能率をもって単に能率という。具体的には、機械能率、製造能率、労働能率などで測定する。機械能率は、エネルギーの投入に対する産出の割合でとらえ、「エネルギー効率80%」のように表す。製造能率は、必要資材量ないしその費用と実現可能な標準との比率、あるいは、実際使用資材量ないしその費用と実現可能な標準との比率をいう。労働能率は、実際作業量と実現可能な標準作業量の比率であるが、この場合、作業量を時間で表せば、実際作業時間と標準作業時間の比率で示される。19世紀末、アメリカで人間作業の能率化が問題になり、能率増進の諸策が推進され、それが科学的管理に発展した。しかし、その後の機械化の高度化と生産のシステム化は、個別作業の能率を内包する、より広い指標を求めるようになり、生産性の概念に重点が移行したが、能率の指標が不要になったわけではない。
[森本三男]
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