内科学 第10版 「前立腺腫瘍」の解説
前立腺腫瘍(腎・尿路腫瘍)
典型的な高齢者癌であり,一般的に緩徐な発育で,治療をしなくても天寿を全うするものもある.ホルモン感受性が高く,内分泌療法も治療選択の1つとしてあげられる.
分類
病理組織学的には95%が腺癌であり,まれに移行上皮癌,小細胞癌,肉腫などがある.
原因・病因
腺癌では,前立腺肥大症と同様にアンドロゲンが成長に関与しているが,詳細は不明である.人種によって罹患率に差があり,黒人は高く,黄色人種は低い.性習慣や食習慣(高脂肪食など)が危険因子の1つと考えられている.
頻度
高齢になればなるほど頻度が高くなる.生活習慣の欧米化,超高齢化社会の到来,PSAによる診断性能の向上もあって,急激に増加している.
臨床症状
早期癌においては排尿症状がみられないことが多い.進行すると血尿,排尿障害などが出現する.骨転移しやすく,腰痛などの骨痛や,脊椎骨転移による麻痺症状で発見されることもある.
検査成績・診断
PSA測定,直腸診,経直腸超音波検査(transurethral ultrasound:TRUS)の3つが診断の柱となるが,PSAが最も有用性が高い.TRUSでは辺縁域に低エコー像をみることが多い.MRI,MRSで診断精度の向上が検討されている.診断確定はTRUSガイド下系統生検による病理診断による.局所進展度についてはMRI,リンパ節,他臓器転移についてはCT,骨転移の検索には骨シンチを行う.
鑑別診断
前立腺肥大症,前立腺炎との鑑別が重要である.
治療・予後
転移がなく,前立腺被膜内に腫瘍がある場合,前立腺全摘除術あるいは放射線治療を行う.被膜外浸潤がある場合や転移がある場合,内分泌治療が中心となる.内分泌治療としてLH-RHアゴニストが多く使われ,抗アンドロゲン薬の併用も行われる.早期癌では10年以上の生存が十分期待できるが,進行癌の内分泌治療では数年すると治療抵抗性になる例が多く,予後は悪くなる.それに対しタキサン系抗癌薬が有効で,新規の抗アンドロゲン薬の開発も進んでおり有望である.[山口雷藏・堀江重郎]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報