前鋸筋(読み)ぜんきょきん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「前鋸筋」の意味・わかりやすい解説

前鋸筋
ぜんきょきん

胸郭の両外側面にある三角状で薄い板状の筋をいう。前鋸筋は、その底辺にあたる部分を前方に向けた形で第1~第9肋骨(ろっこつ)に鋸歯(きょし)状に付着している。筋はこの部位からおこり、後方に向かって胸郭と肩甲骨との間を進み、肩甲骨の内側縁でその前面につく。前鋸筋は、全体として肩甲骨を前方に引く働きをもっている。また、この筋の下部3分の1ほどは、とくに筋が発達しており、肩甲骨を下方に引き下げようとするため、肩甲骨は回転して上腕の外転屈曲を助けることとなる。なお、前鋸筋が麻痺(まひ)すると、同側の上腕を水平にあげることができなくなる。

[嶋井和世]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「前鋸筋」の意味・わかりやすい解説

前鋸筋
ぜんきょきん
serratus anterior

側胸部の第1~9肋骨から起り,胸郭と肩甲骨との間を後内の方向に走り,肩甲骨内側縁と上角および下角の肋骨面についている筋肉。起始部がのこぎりの歯のような形をしているのでこの名がある。肩甲骨を前方に引く働きをするが,特に下3分の2の筋束は下角を前方に引いて肩甲骨を回し,上腕の屈曲と外転を助ける。長胸神経によって支配される。外傷リウマチなどで麻痺を起すことがある。

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