家庭医学館 「副咽頭間隙膿瘍」の解説
ふくいんとうかんげきのうよう【副咽頭間隙膿瘍 Parapharyngeal Space Abscess】
副咽頭間隙は咽頭腔(いんとうくう)の外側にあり、頭蓋底(ずがいてい)を底面とし、舌骨大角(ぜつこつたいかく)を頂点とする逆円錐形(ぎゃくえんすいけい)で、ゆるやかに結合した脂肪組織で満たされた間隙(すき間)です。
周囲は咽頭壁や筋肉、耳下腺組織(じかせんそしき)などで囲まれています。この中には頸動脈(けいどうみゃく)、頸静脈(けいじょうみゃく)、多くの神経(舌咽神経(ぜついんしんけい)、迷走神経(めいそうしんけい)、副神経、舌下神経(ぜっかしんけい))、リンパ節などが含まれます。
この副咽頭間隙に膿汁(のうじゅう)がたまる病気で、急性扁桃炎(きゅうせいへんとうえん)、扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)、むし歯の炎症、下咽頭・食道入口部の外傷、異物などが原因となります。
[症状]
くびの痛み、発熱、口が開けられない、下顎部(かがくぶ)の腫(は)れ、くびの運動制限がみられます。
治療しないで放置すると、副咽頭間隙にある神経のまひ症状(しわがれ声、舌の偏位など)や呼吸困難、頸静脈血栓(けいじょうみゃくけっせん)が現われます。
診察すると、扁桃上後方の腫れがみられ、扁桃が正中(せいちゅう)、前方に押し出されたようになっています。
[治療]
この病気が疑われた場合は、CTやMRIによる検査が行なわれます。
診断がついたら、できるだけ早く全身麻酔下で頸部の切開・排膿(はいのう)が行なわれます。抗生物質の使用も不可欠です。