努力性呼吸

六訂版 家庭医学大全科 「努力性呼吸」の解説

努力性呼吸
(呼吸器の病気)

 努力性呼吸とは、普通の呼吸に使う筋である横隔(おうかく)膜、肋間(ろっかん)筋など以外の呼吸補助筋を多く使わなければならない呼吸のことをいいます。普段は吸気の時に呼吸筋だけを使い、呼気の時は自然に胸郭(きょうかく)が狭まるのですが、何らかの事情でこれでは十分に呼吸ができない時に使う筋を呼吸補助筋と呼び、吸気の時に使う筋と呼気の時に使う筋があります。

 吸気のときに使う呼吸補助筋は、大胸筋(だいきょうきん)脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)僧帽筋(そうぼうきん)斜角筋(しゃかくきん)肩甲挙筋(けんこうきょきん)などです。呼気の時に使う補助筋は腹筋群などです。これらの筋は呼吸筋に比べて効率が悪く、エネルギーも多く使うために消費する酸素量が多くなります。

 努力性呼吸は、上気道閉塞(へいそく)気管支閉塞などによって、一生懸命に呼吸している状態です。たとえば肺気腫(はいきしゅ)、気管支喘息(ぜんそく)の強い発作の場合や腫瘍異物などによる気道の閉塞が起こり、肺に空気を出し入れしにくい状態などにみられます。そのほかに、本来の呼吸筋が使いにくいことが原因になることもあります。

 余談ですが、努力性呼吸と呼吸困難とは一致しないこともあります。努力性呼吸をしていても、呼吸が困難と感じない人もいるのです。それとは反対に、努力性呼吸をしていなくても呼吸困難を感じる人もいます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報