日本大百科全書(ニッポニカ) 「労働取引所連盟」の意味・わかりやすい解説
労働取引所連盟
ろうどうとりひきじょれんめい
Fédération des Bourses du Travail フランス語
19世紀末フランスにおける労働組合運動の地域的連合組織で、サンジカリズムの拠点。労働取引所は、もともと地方自治体が設置した職業紹介所であり、1887年パリとニームで開設されて以来全国各地に設立され、1908年には157を数えている。本来は労働力市場の安定を目的として設けられた組織であったが、管理運営が労働組合にゆだねられることが多かったため、生成期の労働組合を地域別に結集する運動拠点となった。それゆえ労働取引所は、単なる職業紹介業務にとどまらず、相互扶助機能(労働災害・失業の補助)、教育機能(職業訓練、労働者講座など)を兼ね備え、さらにはストライキの支援に力を注ぐ闘争機関でもあった。1892年にはその全国組織である労働取引所連盟が結成され、書記長F・ペルーチエをはじめとするサンジカリストの牙城(がじょう)となった。ゼネストによる社会革命を唱える彼らは、労働取引所を未来社会を生み出す核となるべきものと位置づけている。しかし、やがて産業別組合を中心とした労働総同盟(CGT(セージェーテー))の成長に伴って、1902年に連盟はその地域別部門として合流し、14年にはCGTの「県連」に発展的解消を遂げた。労働取引所そのものは、現在でもパリやリヨンなどで職業紹介業務を行う労働組合会館として存続しているが、かつての政治的性格はもはやない。
[谷川 稔]
『G・ルフラン著、谷川稔訳『フランス労働組合運動史』(1974・白水社)』▽『谷川稔著『フランス社会運動史』(1983・山川出版社)』▽『H・デュビエフ編、谷川稔他訳『サンディカリスムの思想像』(1978・鹿砦社)』