労働災害(読み)ロウドウサイガイ(英語表記)industrial accident

デジタル大辞泉 「労働災害」の意味・読み・例文・類語

ろうどう‐さいがい〔ラウドウ‐〕【労働災害】

労働者の就業にかかわる建設物・設備・原材料・粉塵ふんじんなどにより、または作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡すること。

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精選版 日本国語大辞典 「労働災害」の意味・読み・例文・類語

ろうどう‐さいがい ラウドウ‥【労働災害】

〘名〙 職場における建設物・設備・原料・材料などにより、または作業活動その他の業務に起因して、労働者が負傷したり、病気になったり、死亡したりすること。使用者はその災害の補償をしなければならないことになっている。労災。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「労働災害」の意味・わかりやすい解説

労働災害
ろうどうさいがい
industrial accident

労働者(職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者)が業務遂行中に業務に起因して受けた業務上の災害。具体的には業務上の負傷、業務上の疾病および死亡をいう。「労災(ろうさい)」と略される。欧米では業務上の災害のことをwork accidentやoccupational accidentといい、直訳すれば労働事故、職業事故になるが、日本では事故を「災害」とよぶことも多い。

 広義には、労働者が業務中に被った傷病や障害、死亡のことを「業務災害」、労働者が通勤中に被った傷病や障害、死亡のことを「通勤災害」、第三者(国・事業主・その労働者以外の者)の不法行為によって生じたことを「第三者行為災害」と区別し、それらすべての災害をあわせて「労働災害」として扱う。また、業務上の疾病であっても、遅発性のもの(疾病の発生が緩慢に進行して発生した疾病。たとえば、塵肺(じんぱい)症、鉛中毒症、振動障害など)、食中毒および伝染病については、労働災害からは除くなど、補償制度や報告義務と相まって、さまざまな定義がされている。

 狭義には、労働災害は労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第2条において、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう」と定義されている。

 労働災害を防止するための計画や組織、その他実施すべき事項や届出等に関することを定めた法律が労働安全衛生法である。労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画が同法に基づき策定されるなど、法制化のもと、国として労働災害に対する取組みを行っている。

 労働災害に関する補償については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第8章に述べられている。この労働基準法に準じて、とくに社会保険制度として労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)が制定されるなど、法制化等によって、労働災害の防止、起きた場合の対処、補償等が明確に定められている。

[富田賢吾 2021年3月22日]

労働災害に関連する用語

労働災害は発生件数や、発生原因等について、詳細な統計が行われている。災害の重さの判定、および統計調査のための数値化等をするため、以下のように用語、数値が定義されている。


休業災害
 負傷または疾病の療養のために、被災した日の翌日から休業せざるをえないような労働災害のこと。休業1日以上を休業災害とするのが一般的である。国内では4日以上の休業か、4日未満の休業かによって、報告の方法、補償の内容等が異なるため、休業日数は重要な情報となる。

 とくに、休業を要する災害が発生した場合には、「労働者死傷病報告」という報告を災害の発生した現場のある地域を管轄する労働基準監督署に提出しなければならない(労働安全衛生法100条)。この際、休業4日以上の労働災害については遅滞なく(事情の許す限り速やかに。一般的には1週間から2週間以内程度と考えられている)、また休業1日から3日の労働災害(4日未満)については四半期ごとにまとめて提出しなければならない(労働安全衛生規則97条)など、明確に報告を義務づけている。なお、労働者死傷病報告は、労働災害統計の作成、労働災害の原因の分析、それを元にした同種労働災害の再発防止対策の検討等に活用されている。


不休災害
 負傷または疾病によって、医療機関(事業所内の診療所等を含む)で医師の手当てを受け、被災した日の翌日以降1日も休業しなかった労働災害(休業が1日未満のものを含む)のこと。


度数率
 度数率は労働災害の頻度を表すための数値であり、延べ実労働時間(対象期間中に働いたすべての労働者が実際に働いた労働時間の合計)当りの労働災害による死傷者数で計算される。統計をとった期間中に発生した労働災害による死傷者数を同じ期間中の延べ実労働時間数で割り、それに100万を掛けた数値となる。度数率が高いほど、労働災害の発生件数が多いことを表している。


年千人率
 年千人率は1年間の在籍労働者1000人当り、どのくらい死傷者が発生しているかを示すものである。1年間の死傷者数を1年間の平均労働者数で割り、それに1000を掛けた数値で表す。


強度率
 強度率は延べ実労働時間当りの延べ労働損失日数(労働災害による死傷者の延べ労働損失日数)を示すもので、災害の重さの程度を表したものである。対象期間中に発生した労働災害による延べ労働損失日数を同じ期間中の全労働者の延べ実労働時間数で割り、それに1000を掛けた数値で表す。

 なお、「労働損失日数」は次の基準により算出する。

(1)死亡=7500日
(2)永久全労働不能=身体障害等級1~3級の日数(7500日)
(3)永久一部労働不能=身体障害等級4~14級の日数(級に応じて50~5500日)
(4)一時労働不能=暦日の休業日数に300/365を乗じた日数

不休災害度数率
 不休災害度数率は前述の度数率と同様の考え方で、100万延べ実労働時間当りの不休災害による傷病者数で、不休災害発生の頻度を表す。

[富田賢吾 2021年3月22日]

労働災害防止のための取組み

労働災害の防止のために、その再発防止を徹底することが労働安全衛生法で義務づけられており、事業者は同法に準じた管理体制・組織の構築や運営、届出等が必要となる。労働基準監督署は労働者死傷病報告の受付や、それに伴う労働災害再発防止書の要請、その他、災害補償安全衛生管理の状況調査、行政指導等を主業務としており、事業者の労働災害の防止のための活動を監督する行政組織である。

 また、前述のとおり、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画が策定されており、2018年(平成30)4月からは「第13次労働災害防止計画」が開始されている(2023年3月までの5年間)。

 「第13次労働災害防止計画」では、昨今の労働災害の発生状況から、過労死やメンタルヘルス不調への対策の重要性が増していることや、就業構造の変化および労働者の働き方の多様化を踏まえ、労働災害をすこしでも減らし、安心して健康に働くことができる職場の実現に向け、国、事業者、労働者等の関係者が目ざす目標や重点的に取り組むべき事項を定めている。

 労働災害の防止に関する具体的な事項としては、重点事項の一つに死亡災害の撲滅を目ざした対策の推進をあげており、具体的には建設業における墜落・転落災害等の防止や、製造業における施設、設備、機械等に起因する災害等の防止、林業における伐木等作業の安全対策等をあげている。それに関係する数値目標としても、死亡災害を2017年(978人)と比較して、2022年までに15%以上減少させること、死傷者数の増加が著しい業種や事故の型に着目した対策を講じることにより、死傷者数を2017年(12万0460人)と比較して、2022年までに5%以上減少させること、その他、業種別でも同様に減少目標を定めている(2017年比で建設業・製造業・林業の死亡災害を15%以上減少、陸上貨物運送事業・小売業・社会福祉施設・飲食店の死傷災害を死傷年千人率で5%以上減少等)。

[富田賢吾 2021年3月22日]

労働災害の発生状況

労働災害の発生件数や発生原因等については、厚生労働省がまとめた統計情報を毎年公開している。2019年(令和1)の公開情報を元にその傾向を考察する(厚生労働省「労働災害発生状況」による)。

 2019年の労働災害による死亡者数は845人という結果であった。前年比として7.0%減少しており、前述の「第13次労働災害防止計画」の基準年としている2017年と比較しても13.6%減少という結果であった。この2年間は、連続して過去最少となっており、長期的にみても10年前の2009年が1075人、20年前の1999年(平成11)が1992人であったことも考慮すると明らかな減少傾向にある。

 業種別で死亡者数をみると、建設業、製造業、陸上貨物運送事業の順に多く、この傾向はこの十数年変わっていないが、ほぼすべての業種で死亡者数は減少傾向にある。

 同様に2019年の労働災害による休業4日以上の死傷者数は12万5611人という結果であった。前年比としては1.3%減少と微減しているが、2017年と比較すると4.3%の増加となっており、長期的にみても10年前の2009年が11万4152人であり、増加傾向にある。20年、30年程度の長期スパンでみれば、明らかに減少している(例:1989年は21万7964人)が、2010年ころからは増加傾向に転じている。

 業種別にみると、建設業や製造業などでは減少傾向にあるが、陸上貨物運送事業、商業、社会福祉施設、接客・娯楽などの第三次産業(第一次産業は農業・林業・漁業、第二次産業は鉱業・建設業・製造業であり、第一次産業・第二次産業以外の産業を第三次産業としている。すなわち運輸・通信・小売・卸売・飲食・金融等の産業をさす)における増加が顕著であることが2010年代以降の特徴的な傾向といえる。これはそれらの業種に従事する労働者自体の数が増加していることにも起因している。人数単位の事故発生率である年千人率でみれば、小売業などの商業や、接客業などは微増程度であるが、一方で社会福祉施設などは明らかな増加傾向(2015年の2.01から2019年の2.39)であり、この原因としては「転倒」や「腰痛」といった労働災害が多いこと、高齢者の災害が多いことなどが考えられる。

 また、2010年代中ごろからは派遣労働者や外国人労働者の急増に伴い、当該労働者の死傷災害が急増していることも大きな特徴である。

 死亡災害の起きる要因(「事故の型」として分類される)としては、「墜落・転落」(216人)が多く、「交通事故(道路)」(157人)、「はさまれ・巻き込まれ」(104人)、「激突され」(77人)と続く。一方で死傷災害(4日間以上の休業)の要因としては、「転倒」が2万9986人ともっとも多く、ついで「墜落・転落」(2万1346人)、「動作の反動・無理な動作」(1万7709人)、「はさまれ・巻き込まれ」(1万4592人)と続いている。

[富田賢吾 2021年3月22日]

今後の課題

労働災害の件数は1972年(昭和47)に労働安全衛生法が制定されて以降、目に見えて減少してきた。しかしながら、2010年ころから減少傾向が止まり、「増加」に転じてきてしまっている。この背景には以下のようなことが考えられている。

(1)第三次産業(商業、飲食業、保健衛生業等)の労働災害の大幅な増加。

(2)厳しい経済環境下における安全管理の経費の削減。

(3)団塊の世代のリタイアに伴う安全衛生ノウハウ継承の断絶等による「現場力」の低下。

(4)非正規労働者や現場業務の経験不足の労働者に対する安全衛生教育等の不足。

(5)震災復旧・復興需要の急増等による景気回復期の業務量拡大の影響。

 こういった背景から、昨今の労働災害防止のための取組みには、個人の能力や経験への依存から、システムとしての運用に転換することで、安全衛生活動を組織的・継続的に維持・改善していく手法が重要視されてきている。

 厚生労働省の推奨する「労働安全衛生マネジメントシステム」(Occupational Safety and Health Management System:OSHMS)がそのシステム化の例であり、「リスクアセスメントなどの先取り型の管理」と、「組織全体でのシステムとしてのマネジメントの運用への転換」が図られている。昨今ではこのOSHMSのさまざまな指針等が公開され、多くの企業がこのような取組みを進めている。

 また、国際標準化機構(ISO)においてもOSHMSに関する国際規格であるISO45001が2018年3月に発行され、既存の国際規格であるOHSAS18001(1999年発行、2007年改訂)とあわせて、国際標準の規格としても、労働安全衛生が重要視されている。

 いまや安全衛生管理、労働災害発生の防止は組織全体で取り組むべき重要な業務であり、運営・経営のための重要な要素として位置づけられている。

[富田賢吾 2021年3月22日]

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改訂新版 世界大百科事典 「労働災害」の意味・わかりやすい解説

労働災害 (ろうどうさいがい)
labour accident
occupational injury

労働過程に伴って発生する労働者自身がうける災害をいう。統計上は区別する国が多いが,通勤途上の災害をも労働災害に準じて扱うのが世界的傾向となっている。また,三池炭鉱ガス爆発にもとづいて発生した一酸化炭素中毒のようなものをも含んでおり,〈業務上の負傷〉よりも範囲が広い。

労働災害は産業革命後激増してきたが,個々の労働災害は以下のようないくつかの要因の組合せによって発生していることが多い。(1)安全でない生産手段の使用 危険な機械を安全装置なしに使用するとか,爆発の危険のあるガスの爆発を防御する適切な措置を欠くなどの例が数多い。しかも近年は急速な技術革新のもとで,危険な物質の取扱いがふえ,設備の大規模化は災害をも大規模化させている。また,鉱山の地下労働や高熱作業などの劣悪な労働環境は,労働災害をひきおこす要因になる。労働災害の大部分には,これら生産手段の危険性が基礎にある。(2)劣悪な労働条件にもとづく労働者の疲労 長い労働時間,速い労働速度,過重な労働負担は,労働者の疲労を高め,労働災害を誘発する危険性を高める。深夜労働も同様である。労働災害の9割近くは,労働者の疲労が関与しているとされる。(3)労働者の個人的条件 若年者,未習熟者,高齢者には労働災害が多い。これに対する最良の対策は安全教育である。(4)労働者の生活条件 劣悪な栄養状態や住宅条件,長い通勤による疲れなどは,災害をひきおこす誘因となる。(5)労働者の不満 職場内の不満だけでなく,職場外の不満(たとえば夫婦げんかなど)も,労働災害を誘発する。ところが,資本主義的経営は利潤追求のために,生産手段の安全化をおろそかにし,安全教育を行わなかったり不十分にしかせず,労働条件の切下げに主たる関心があるため,資本主義の歴史は労働災害激発の歴史だったといってよい。

産業革命のあと,労災防止の世論の高まり,労働運動の発展と労働運動における安全確保要求の高まりなどをうけて労働安全立法が発展しはじめ,いまでは労働立法のなかで重要な部門を占めるようになっている。とくに1970年代に入ってから,本質的な意味での〈労働の人間化〉の一翼として,各国で労働安全立法の大改正が行われている。イギリスの労働衛生安全法(1974),アメリカの労働安全衛生法(1970)などは一例である。資本家のなかからの安全運動は,20世紀初めアメリカで始まった。1912年に全国産業安全協会が結成され,それがまもなく全国安全協会(NSC)と改名したが,これがアメリカでの安全運動の中心となっている。イギリスでは王立災害防止協会(ROSPA)があり,この一部門に産業安全部があって,NSCのような活動をしている。資本家団体のスローガンは〈安全はペイする〉というものだが,宣伝にもかかわらず,なかなか災害が減らないのは,単に無知な経営者が多いだけでなく,ペイしない災害が多いためでもある。日本の労働安全立法は労働基準法(1947公布)と鉱山保安法(1949公布)が中心であるが,前者の第5章〈安全及び衛生〉は,基本的には1972年に削除されて,別に労働安全衛生法が同年設けられた。イギリスの工場法のように,一般的規定を含む労働安全衛生規則のほか,個別の危険についての防止策を規定している三つの規則がある(規則ではこのほか衛生関係のものが多い)。別に労働災害防止団体法(1964年公布の〈労働災害防止団体等に関する法律〉が72年〈労働安全衛生法〉の制定に伴い改正され,名称も改められたもの)があって,中央労働災害防止協会のほか,災害多発産業に業種別の労働災害防止協会をつくらせ,一定の安全のための事業を営むことを義務づけている。これらの協会は,すべて経営者中心の組織である。

第2次大戦後の労働災害は,災害件数ならびに死亡者数については1960年代にかけて増加傾向を示し,海上労働者ならびに公務員を除く労働基準法にもとづく届出死亡者数は1950年の4127人が60-66年には各年6000人を超え,61年には6712人でピークを示した。また労働者災害補償保険(労災保険)の災害件数は,1950年の62万が68年には171万に達した。労働災害の発生状況を比較する指標として,休業1日以上の災害頻度を示す災害度数率(労災死傷者数÷延べ労働時間×100万)と,災害の質を示す災害強度率(労働損失日数÷延ベ労働時間×1000)とがある。これによれば,災害度数率は1951年の36.7から68年には11.1へ,災害強度率は2.17から1.00へと低下している。また近年の労働災害の状況において注目すべき点は,1961年以降続いていた低下傾向が近年停滞しつつあり,産業によっては上向きにさえなっていることである。労働災害発生率の高いのは,建設業,鉱業,林業,貨物取扱業で,製造業では,木材,家具,金属製品,窯業,土石,食料品工業に多く,商業,サービス業では少ない。イギリスやフランスでは労働災害率は大企業で高いのがふつうであるが,日本では小企業ほど著しく高く(1980年は度数率でいって1000人以上規模の0.32に対して,30~49人規模では11.10で30倍を超える),構内下請でも元請工員に比べてその災害率は著しく高い。小企業,下請企業での労働条件の劣悪さの反映である。
労働安全衛生 →労働環境
執筆者:

労働災害については,330件の災害のうち1件は重大,29件は軽少,300件はけがのない(危うくけがを免れた)災害であったことを指摘したハインリヒの法則は有名である。

 災害の予防のためには,発生した災害や未然事故(ニアミスnear miss)の原因分析から危険要因を明らかにしこれを取り除くこと,災害発生の事前予測が重要である。新しい作業システムや新しい技術が導入されるときはこれを必ず実行する必要がある。原因は前述のとおりであるが,大別すれば,不安全・不衛生な状態(物的原因),不安全・不衛生な行動(人的原因)に分けられる。物的原因による事故は,機械や装置,有害環境などと人間の不安全・不衛生な接触・暴露により発生するものであるから,これらを安全な衛生的な状態に保つことが根本である。機械装置,環境などの工学的な対策や,労働の条件の整備などにより,不安全行動が発生しても,事故につながらないような対策をとる。人的原因については,労働者の不注意を漫然と強調することは危険である。人間の不注意は,なんらかの条件が重なるときは法則的に発生するからで,なぜ不注意-不安全行動が生まれるかを検討せねばならぬ。不安全行動をひきおこさないために,労働条件の整備,不健康や疾病・心配事の解決,職場での人間関係や意思疎通の改善などが必要である。危険度の高い仕事では健康管理が重要度を増してくる。人間の注意力にのみ依存する災害対策は十分な効果が期待しがたい。災害予防の基本は,持続されるくふうされた安全教育訓練,絶えざる日常的な職場の安全点検活動と,その結果にもとづく速やかな対策が基本で,これを遂行する事業主の責任と熱意,労働者の自主的,積極的な活動が災害予防の成功に通ずる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「労働災害」の意味・わかりやすい解説

労働災害【ろうどうさいがい】

労災と略される。工場,事業場等で作業中の事故により労働者の受ける疾病,傷害,死亡等の災害。発生形態で職業病と区別されるが,それも含める考え方もある。一般に事故は労働者の過失・不注意からひき起こされるというより,使用者の保安対策の欠如や労働条件の劣悪等に起因する場合が多い。災害の防止と補償は,労働安全衛生法船員法鉱山保安法・労働災害防止団体法・労働者災害補償保険法等に規定されている。→安全配慮義務
→関連項目過労死災害補償労働衛生

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「労働災害」の意味・わかりやすい解説

労働災害
ろうどうさいがい
industrial accidents

作業環境,作業行動などの業務上の事由によって発生する労働者の負傷,疾病,死亡をいう。ただし狭義には,突発的な事故が発生した結果生じたものに限定され,徐々に発生する職業病とは区別されている。労働災害の頻度を表わす指標としては度数率,強度率などが用いられる。度数率は延べ 100万労働時間中に発生した平均災害件数で表示され,その数値が大きいほど発生率が高いことを示している。日本では,100人以上雇用の事業所における全産業平均度数率は 1970年 9.20,80年 3.59,90年 1.95である。強度率は 1000延べ労働時間あたりの労働損失日数をもって表わし,70年 0.88,80年 0.32,90年 0.18となっている。労働災害の防止については,労働基準法労働安全衛生法労働安全衛生規則,労働災害防止団体等に関する法律,じん肺法その他の法律が制定され,詳細な規定をおいており,使用者の無過失責任を認めるほか,労働者災害補償保険法に基づき,迅速,公正な補償がはかられることになっている。

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人事労務用語辞典 「労働災害」の解説

労働災害

労働災害(労災)とは、労働者が業務・通勤が原因で傷病を負ったり、障害や死亡に至ったりすることです。業務が原因で負った傷病を「業務災害」、通勤時に負った傷病を「通勤災害」といいます。

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世界大百科事典(旧版)内の労働災害の言及

【労働安全衛生】より

…労働者の就業にかかわる建設物,設備,原材料,ガス,蒸気,粉塵(ふんじん)などにより,または作業行動その他業務に起因して労働者が負傷し疾病にかかり,または死亡することを労働災害というが,それを未然に防止することはもちろん,さらに労働者が快適に作業できるよう作業条件・環境を適正に整備し併せて健康管理を行い労働者の安全と健康の確保を目的とする諸施策や活動をいう。その内容・基準については,労働基準法や労働安全衛生法(後述)を中心とする関係法規が定めているが,各事業場ではそれを遵守することはもちろん,さらに安全衛生水準向上のためきめ細かな対策が必要となる。…

※「労働災害」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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