動物工場(読み)どうぶつこうじょう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

動物工場
どうぶつこうじょう

動物の体内を利用して特定の物質を生産する技術。たとえばウシ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳(ほにゅう)動物に、特定のホルモンなどの物質産生に関与する遺伝子を組換え技術によって組み込み、乳汁などのなかに目的の物質を分泌させるといった方法である。海外での研究・開発が先行しており、現在開発が報じられている物質としては、ヒト血清アルブミン、ヘモグロビン、インシュリンなどがあげられる。実際に、2006年8月、アメリカのGTCバイオセラピューティクス社は、クローン山羊(やぎ)に生産させた血液凝固を防ぐ作用をもつヒト組換えアンチトロンビンのヨーロッパにおける販売についての承認を、ヨーロッパ医薬品審査庁(EMEA)から取得した。動物工場の利点は、細胞や微生物を使用した組換え医薬品の生産よりも多量生産が可能なこと、医薬品工場よりも施設設備費や生産にかかるコストが低いこと、などである。一方今後解決すべき問題としては、動物工場として有用な動物の飼育方法の確立や動物の安定化に長期間かかる、動物の飼育・管理は人手と手間がかかり、自動化しにくい、動物を使うために感染やコンタミネーション(汚染)の危険性が高い、などの点があげられる。こうした課題のクリアと、目的物質を分離する方法について収量の向上と効率化が必要である。[飯野和美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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