医療社会事業(読み)いりょうしゃかいじぎょう

改訂新版 世界大百科事典 「医療社会事業」の意味・わかりやすい解説

医療社会事業 (いりょうしゃかいじぎょう)

医療福祉事業と同じ意味のことばとして使われる場合と,英語のmedical social workの訳語として使われる場合とがある。前者は,医療費や生活費に困るというような経済的な理由などのために治療が受けられないことがないように,医療保険や公的扶助,医療費公費負担制度などの形で行われる社会福祉,社会保障,公衆衛生などの諸施策をさす。後者は,保健・医療に関連して生じる患者・家族の精神的,社会的,経済的な問題をとりのぞくために,主として個別的に行われる医療ソーシャル・ワーカーmedical social workerによる対人サービス活動をさすものとしてとらえられる。医療ソーシャル・ワーカーの活動は,19世紀末から20世紀初めにイギリスやアメリカで始められたもので,日本でも,第2次大戦前聖ルカ病院(現,聖路加国際病院)や済生会病院などで行われていたが,一般的には戦後になって普及した。進んだところでは,個別相談の段階を一歩進めて,医療チームの一員として医療に直接貢献する形をとることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「医療社会事業」の意味・わかりやすい解説

医療社会事業
いりょうしゃかいじぎょう
medical social work

保健,医療領域における社会事業。医療ソーシャルワークともいわれる。主として,患者や家族に対して,疾病の適切な予防,治療あるいはリハビリテーションを妨げているような,心理的,社会的,経済的な問題を解決,調整できるよう援助することをいう。これを行う専門家を医療ソーシャルワーカー MSWあるいは医療社会事業家などと呼ぶ。その専門技術や方法としては,(1) ケースワーク,(2) グループワーク,(3) コミュニティー・オーガニゼーション,(4) ソーシャルアクション,(5) 教育・調査・研究活動など,幅広いものが含まれる。欧米では,貧困な病人を保護した救貧院や宗教的慈善施設から病院が発生したため,医療社会事業的な活動の伝統をもち,19世紀末のイギリスで専門分野として取上げられ,その後次第に公衆衛生分野にも進出してきた。日本では第2次世界大戦後アメリカから導入されたが,MSWはまだ正式の職種として規定されていないなど,医療制度のなかで十分承認されるにいたっていない。

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