改訂新版 世界大百科事典 「十分一役」の意味・わかりやすい解説
十分一役 (じゅうぶんのいちやく)
江戸時代,鉱山などにおける課役の一つ。院内銀山,石見銀山ほかの大規模な幕藩営鉱山や,秋田籠山銀絞所などでも行われていた。鉱山と鉱山労務者・管理経営者の住居は,柵で囲まれた山中と呼ばれる区域に隔離され,その区域への出入りには番所が設けられていた。それは鉱山統制を目的とするものであったが,同時に,山中への必要物資の流通を統制し,そこに財源を求めようとするものであった。米は多くの場合,幕藩領主の独占的な年貢米の払下げによっていたが,その他の日常必需品の販売は,外部の商人が,その持ち込む商品の代銀の10分の1を番所(十分一役所)に前納したうえで,山中での商売を許された。その商品が売れなかった場合には,商人が山中から退去するさいに返金されることとなっていた。なお,鉱山にはその鉱山だけで流通する山銀,山銭などと呼ばれる鉱山貨幣が使用されている場合も少なくない。
執筆者:佐々木 潤之介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報