番所(読み)バンショ

デジタル大辞泉 「番所」の意味・読み・例文・類語

ばん‐しょ【番所】

番人が詰めている所。ばんどころ。
江戸時代交通要所に設けて、通行人船舶などを見張り、積み荷の検査や税の徴収などを行った所。御番所。ばんどころ。
江戸時代の町奉行所。江戸の南北町奉行所、大坂町奉行所をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「番所」の意味・読み・例文・類語

ばん‐しょ【番所】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 番人の詰める所。見張所。ばんどころ。〔大永四年細川亭御成記(1524)〕
  3. 江戸時代、交通の要所に設けて、通行人や船舶などを見張り、税の徴収などを行なった所。ばんどころ。
    1. [初出の実例]「道中に公儀よりの番所有ければ」(出典:仮名草子・智恵鑑(1660)九)
  4. 江戸時代、町奉行所のこと。江戸の南北町奉行所や大坂町奉行所をいう。御番所。
    1. [初出の実例]「あした出来ぬと番所だと土手でかし」(出典:雑俳・柳多留‐一八(1783))

ばん‐どころ【番所】

  1. 〘 名詞 〙 番人の詰所。ばんしょ。
    1. [初出の実例]「刀は、常に、御弓の番処(ハンドコロ)に、源心が太刀とて、御座候」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品三)
    2. 「番所(バンドコロ)へ御断申とひしめく時」(出典:浮世草子好色二代男(1684)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「番所」の意味・わかりやすい解説

番所 (ばんしょ)

江戸時代には交通の要所に番所が設けられ,通行人,荷物,通航船などを監視し,検査,徴税などを行った。海上交通では,幕府により下田番所,浦賀番所,長崎の遠見番所をはじめ大坂,兵庫,長崎などの主要港に設けられ,利根川,淀川など主要河川にも中川番所をはじめ要所に船改(ふなあらため)番所が置かれた。陸上交通では街道に設けられた関所が番所であり,実際に関所の建物を番所と呼んでいた。各藩でも隣接する藩や天領に通じる要所に口留番所を設け,主として領内産物が他領へ流出するのを監視し,出入りする物資に一定の割合で徴税することもあった。

 江戸では,ただ単に御番所という場合は町奉行所のことである。また江戸城を守衛するため郭内の各所に番所が設けられ,武家地の治安維持のためには大名・旗本が幕府の命令で設ける辻番所があった。町人地内の両国橋,新大橋など重要な橋のたもとには橋番所が置かれた。なお町人地の各町にあった自身番木戸番の詰所は自身番屋,木戸番屋と呼ばれていた。
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百科事典マイペディア 「番所」の意味・わかりやすい解説

番所【ばんしょ】

近世に警備や見張りなどの役目にあたる番人が詰めた施設。通行人・船舶および荷物などを監視,税の徴収を行う場合もあった。陸上交通では,五街道など幹線道に幕府が設けた関所の建物が番所とよばれていた。諸藩でも他領に通じる交通の要所に口留(くちどめ)番所を設置,人と荷物の出入りを取り締まった。海上交通では幕府が設けた下田番所・浦賀(うらが)番所をはじめ,大坂・兵庫・長崎などの主要港に設けられ,主要河川にも中川番所など船改(ふなあらため)番所が置かれた。また海上を航行する異国船などの発見・監視にあたる遠見(とおみ)番所もあった。江戸では町奉行所が御番所と称されたほか,江戸城を守衛するための御門番所が設けられ,武家地には辻番所があった。また重要な橋のたもとには橋番所が置かれた。
→関連項目吐【か】喇列島長島(鹿児島)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「番所」の意味・わかりやすい解説

番所
ばんしょ

(1)番人の詰所(つめしょ)。室町時代は幕府営中の祗候(しこう)所、戦国時代は大名の近習(きんじゅ)の詰所を称した。江戸時代は江戸城諸門そのほか広敷番(ひろしきばん)や百人組などの役人の詰所をいい、また江戸や京都などに置かれた辻(つじ)番の詰所も番所とよんだ。(2)江戸時代に交通の要所に設置して船舶や通行人を検閲・監視し、あるいは税を徴収した役人の詰所。各船改(ふなあらため)番所のなかでも幕府の浦賀(うらが)番所は著名。陸路でも要地には幕府や諸藩の番所があり、天領・私領の境には口留(くちどめ)番所があった。関所を番所と称した所もある。(3)江戸や大坂などの都市では、それぞれの地の奉行(ぶぎょう)所のことを番所ともいった。(4)旧琉球(りゅうきゅう)藩および1897年(明治30)以前の沖縄県の地方庁の一つ。

[南 和男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「番所」の意味・わかりやすい解説

番所
ばんしょ

江戸時代,幕府や諸藩が交通の要所などに設置した監視所。必要に応じて,通行人,通航船舶,荷物などの検査や税の徴収を行なった。幕府は主要港,主要河川に設置し,諸藩は藩境に口留番所を設けて,領内の出入りを監視した。また江戸,京都の市中警備のために,辻番所が設置された。なお,江戸の町奉行所のことを御番所といった。 (→自身番 , 辻番 )

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「番所」の解説

番所
ばんしょ

警備や見張役のため番人が詰める施設。江戸時代,口留番所をたんに番所ということもあった。また幕府が設置した関所の建物を番所とよび,関所のなかでも伊豆国下田・相模国浦賀や江戸中川のような海上・河川を取り締まる施設は番所と称した。江戸では武家地の警備のために辻番所がおかれ,江戸城警備のため諸門に御門番所があった。このほか江戸の町奉行所を番所ともいい,土佐国高知藩では宿問屋場を送番所と称した。

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世界大百科事典(旧版)内の番所の言及

【東廻海運(東回海運)】より

…(2)冬船を改め夏船とし,航路は房総半島を迂回し,相州三崎か伊豆下田に向かい,そのうえで南西の風を待って江戸湾に入る。(3)常陸平潟,那珂湊,銚子,小湊などの浦々に番所を設置し,船の遅速,水夫(かこ)の勤惰,海難の原因などの調査を行わせ,さらに沿岸の諸侯,代官に廻船救護にあたらせるなどの安全策をとる。以上の東廻海運策の特徴は,廻漕船を幕府直雇いとし,従来の商人請負に伴う高率請負料を低運賃に改めたことと,江戸直航路の開拓にあった。…

※「番所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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