日本大百科全書(ニッポニカ) 「千と千尋の神隠し」の意味・わかりやすい解説
千と千尋の神隠し
せんとちひろのかみかくし
日本映画、2001年(平成13)、宮崎駿(みやざきはやお)監督のアニメーション映画。10歳の千尋が両親と引越し先に向かう途中、神々が疲れを癒す銭湯の敷地に入ってしまう。豚の姿にされた両親を元の姿に戻すために、千尋はこの銭湯で働くことになるが、名前を一字奪われ「千」とされてしまう。健気(けなげ)に働く彼女は両親を元の姿に戻すことに成功してこの地を出る。礼儀や労働を学んでいき困難に立ち向かう、という一人の少女の成長物語である。しかし名前の剥奪(はくだつ)が出自の喪失の危機であることを描いている点、あるいは「カオナシ」に象徴されるように、他者に受け入れてもらうことの困難さを描いているという点で、本作は自己の存在、そして自己の存在の意味への問いを投げかけているという側面もある。宮崎の監督作はヒット作が多いが、そのなかでも空前の興行収入を記録。海外の映画賞も受賞した。
[石塚洋史]
『佐藤忠男著『日本映画史3、4』増補版(2006・岩波書店)』