千と千尋の神隠し(読み)せんとちひろのかみかくし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「千と千尋の神隠し」の意味・わかりやすい解説

千と千尋の神隠し
せんとちひろのかみかくし

日本映画、2001年(平成13)、宮崎駿(みやざきはやお)監督アニメーション映画。10歳の千尋両親と引越し先に向かう途中、神々が疲れを癒す銭湯敷地に入ってしまう。豚の姿にされた両親を元の姿に戻すために、千尋はこの銭湯で働くことになるが、名前を一字奪われ「千」とされてしまう。健気(けなげ)に働く彼女は両親を元の姿に戻すことに成功してこの地を出る。礼儀や労働を学んでいき困難に立ち向かう、という一人の少女の成長物語である。しかし名前の剥奪(はくだつ)が出自喪失危機であることを描いている点、あるいは「カオナシ」に象徴されるように、他者に受け入れてもらうことの困難さを描いているという点で、本作は自己の存在、そして自己の存在の意味への問いを投げかけているという側面もある。宮崎の監督作はヒット作が多いが、そのなかでも空前の興行収入を記録。海外の映画賞も受賞した。

[石塚洋史]

『佐藤忠男著『日本映画史3、4』増補版(2006・岩波書店)』

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デジタル大辞泉プラス 「千と千尋の神隠し」の解説

千と千尋の神隠し

2001年公開の日本のアニメーション映画。監督・脚本:宮崎駿、アニメーション制作:スタジオジブリ。声の出演:柊瑠美、入野自由、夏木マリ、内藤剛志、沢口靖子ほか。不思議な町に迷い込んだ少女が強欲な魔女の下で働かされながら、元の世界に帰るために成長してゆく姿を描く。第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第1回東京アニメアワードアニメーションオブザイヤー受賞。このほか第25回日本アカデミー賞最優秀作品賞、第56回毎日映画コンクール日本映画大賞など国内で数多くの映画賞を受賞。また、海外でもアカデミー賞長編アニメ賞、ベルリン国際映画祭金熊賞、アニー賞を受賞するなど高く評価されている。文化庁主催の「日本のメディア芸術100選」に選出。映画興行収入は316億円を超え、2020年12月まで歴代第1位だった。

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