日本大百科全書(ニッポニカ) 「千人隊」の意味・わかりやすい解説
千人隊
せんにんたい
I Mille イタリア語
1860年のガリバルディの指揮下に両シチリア王国への遠征を敢行した義勇軍部隊のことで、その人数は正確には1076とも1088ともいわれる。イタリア北部出身の隊員がもっとも多く、ついでトスカナとシチリアの出身者が多かった。隊員は社会的には知的ブルジョア層と都市の職人的労働者層に属し、おおむね1848年と59年の革命の経験者であった。60年5月6日にジェノバを出帆してから約7か月に及ぶこの遠征は、「イタリアとビットリオ・エマヌエレ」という国民協会のプログラムを受け入れたガリバルディに指導されていたが、反面マッツィーニの共和主義革命のプログラムの影響も受けていた。後者のプログラムは失敗に終わったが、下からの統一を体現したこの遠征は、国家統一事業(リソルジメント)に独特の民主的性格をもたらした。なお千人隊というのは後の伝説上の呼称であって、当時の正式の名称は「アルプス師団」Cacciatori delle Alpiである。また隊員が着用した赤茶色のシャツにちなんだ「赤シャツ隊」の別名もある。
[重岡保郎]