朝日日本歴史人物事典 「千林尼」の解説
千林尼
生年:生年不詳
江戸末期の曹洞宗の尼。周防国西岐波(山口県宇部市)の農家権右衛門の次女。夫の素行が悪く,家を出て曹洞宗の僧となる。天保の終わりごろ郷里に戻り,のち船木(厚狭郡楠町船木)逢坂の観音堂に住す。船木は交通の要所ながら大変な悪路であったことから,各所に通じる道路に石畳を敷く大事業をなしとげた。その後も架橋や道路整備に尽力。粗衣粗食をもってし,浄財を集めて社会事業に尽くし,60歳前後で没した。その土木事業の跡は時代の波とともに消えつつあるが,昭和10(1935)年にはその顕彰碑が船木の瑞松庵に建てられた。<参考文献>曹洞宗尼僧史編纂会編『曹洞宗尼僧史』,長谷川卒助『近世船木物語』
(熊本英人)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報