日本大百科全書(ニッポニカ) 「卓越大学院」の意味・わかりやすい解説
卓越大学院
たくえつだいがくいん
世界をリードする研究者や起業家を育てる大学院。文部科学省が2018年度(平成30)から導入した。世界最高水準の教育・研究内容をもつ5年一貫の博士課程「卓越大学院プログラムWISE Program(Doctoral Program for World-leading Innovative & Smart Education)」に基づき、海外のトップ大学、民間企業、研究機関などと広範に連携しながら、世界的なイノベーション、学術研究、政策立案をリードする人材を育成する。いわゆる「象牙(ぞうげ)の塔」にこもりがちであった閉鎖的な学術・研究体質を打破し、国際的に通用する「知のプロフェッショナル」の育成を目的とする。他の産学連携プロジェクトとの連動も認める。卓越大学院は最先端の人材の育成・交流の場や共同研究の拠点となり、日本全体の大学院改革やレベルアップの牽引(けんいん)役となるほか、博士号取得者(ポスドク)の就職先の多様化などに資する役割も担っている。全国の国公私立大学院から応募された博士課程を日本学術振興会が審査し、卓越大学院プログラムに選ばれると、国からの補助金を受けられる。
2018年度は、東北大学の人工知能(AI)を使いこなす人材育成、京都大学の先端光・電子デバイス創成学、広島大学のゲノム編集先端人材育成など13大学15事業を卓越大学院プログラムに選んだ。初年度は1大学院当り最大5億5000万円の補助金がつき、7年間支給される。ただし次年度以降、徐々に補助金額を削っていき、民間企業からの外部資金獲得などを促す仕組みとなっている。
[矢野 武 2019年7月19日]