日本大百科全書(ニッポニカ) 「南米諸国連合」の意味・わかりやすい解説
南米諸国連合
なんべいしょこくれんごう
Union of South American Nations 英語
Unión de Naciones Suramericanas スペイン語
南米諸国の政治、経済、文化的統合を目ざす国際機構。2008年発足。スペイン語の表記を略してUNASUR(ウナスール)とよばれるほか、「南米国家共同体」と訳されることもある。2011年時点で南米諸国連合の域内人口は約3億9600万、域内総生産(GRP)は約4兆2000億ドルに達しており、将来的には南米の一大政治・経済圏の誕生を目ざしている。域内の政治対話や安全保障の強化のほか、貧困や不平等の撲滅、識字率向上などの教育の充実、資源活用などエネルギー政策の統合、インフラ整備、金融危機や災害への相互協力などを目的としている。本部・事務局をエクアドルのキトに、南米議会をボリビアのコチャバンバに置く。2015年8月時点で加盟国はアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラの12か国である。議長国は12か国の持ち回りで、毎年交代する。最高意思決定機関は首脳評議会で毎年1回開催するほか、外相評議会や各国代表1~2人で構成する代表委員評議会を定期的に開催している。
2004年に創設された南米共同体を前身として、2007年の南米エネルギー・サミットで南米諸国連合に改称し、2008年に南米諸国連合設立条約を採択(発効は2011年)して発足した。2008年に、政情不安に陥ったボリビア政権と反体制派との仲介に乗り出して国際的な存在感を示した。また、南米・アフリカ首脳会議を開くなどアフリカ・アラブ地域との連携に積極的である。南北アメリカ大陸には1951年に発足した米州機構(OAS)があるが、南米諸国連合はアメリカ合衆国抜きの民族主義的色彩が濃い国際機構で、2015年にはアメリカ政府の対ベネズエラ経済制裁に共同で撤回を迫る姿勢を示した。
[編集部 2015年12月14日]