原子はそれぞれ固有の波長の光を吸収する性質をもつので,この光吸収現象を利用して元素の定量を行う分析法。光を吸収する原子線は原子の基底状態(最低のエネルギー準位)から励起状態への電子遷移に由来するもので共鳴線resonance lineと呼ばれる。実験的には,化学炎(空気-アセチレン炎,酸化二窒素-アセチレン炎など),電気加熱高温炭素炉を用いる2000~3000Kの高温媒体中に溶液試料を導入して原子を生成し,この原子蒸気層に中空陰極ランプ(光源)からの共鳴線に相当する光を照射する。このとき光源光が原子蒸気層で吸収される光吸収量(実際には吸光度)は溶液試料中の元素濃度と比例関係にあるので,試料中の元素濃度の定量が可能となる。ただし,水銀は溶液中に還元剤を加えて直接水銀原子を発生させる還元気化法,ヒ素,セレンなどは還元剤との反応による水素化物発生法によって分析する。原子吸光法は1955年に創始されたが,約70元素についてきわめて高感度で,ppm(10⁻6g/ml)~ppb(10⁻9g/ml)レベルの分析が可能であることから微量分析法として確立され,急速に発展した。公害問題となった水銀,カドミウム,鉛,ヒ素,クロムなどの有害元素,臨床分析項目であるマグネシウム,カルシウム,鉄,亜鉛,銅などの必須元素のほか,多分野において種々の金属元素の微量分析法となっており,装置も市販され,現在広く利用されている。
→検出限界
執筆者:原口 紘炁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…また,溶液中に含まれる金属イオンを錯体形成剤と結合させ,有色錯体として分析することもできる。試料物質を高温条件下で原子に解離させ,生成した原子の紫外・可視吸収を観測する分析法は原子吸光法と呼ばれる。この方法は試料中の微量元素,とくに金属元素の定量分析に適している。…
※「原子吸光法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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