取出(読み)とりいず

精選版 日本国語大辞典 「取出」の意味・読み・例文・類語

とり‐い・ず ‥いづ【取出】

[1] 〘他ダ下二〙
※竹取(9C末‐10C初)「文を書きおきてまからん。恋しからん折々、取いでて見給へ」
※枕(10C終)四〇「白樫といふものは〈略〉をかしきこと、めでたきことにとりいづべくもあらねど」
③ 引きいだす。事を引きおこす。
源氏(1001‐14頃)帚木「思ひかけぬさいはひ、とりいづる例ども、多かりかし」
[2] 〘自ダ下二〙
① 勢いよく出発する。いでたつ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② 暮らし向きなどが向上する。気持調子づく。
浮世草子日本永代蔵(1688)五「此跡取、金銀有に任て少し取出、手掛者を聞立」

とり‐だ・す【取出】

〘他サ五(四)〙
① 取って出す。あるものの中から取って、外に出す。選び出す。とりいだす。
※清原国賢書写本荘子抄(1530)一「請伴に師曠 恵子をとりたすぞ」
芸娼妓などの身請けをする。請け出す。
※浮世草子・好色盛衰記(1688)四「傘(からかさ)の与右門といふ太鞁持までも。ひとつに成、はや取出す談合つのりて」
[補注]よみの明らかでない例は「とりいだす」と読むことも考えられる。

とり‐で【取出】

〘名〙
① ものなれないこと。しはじめたばかりであること。また、その人。かけだし。しんまい。
※浮世草子・好色二代男(1684)一「漸漸取出(トリデ)の男は、ふられて其儘捨ず」
人気の高まっていること。売り出していること。売出し。
※浮世草子・嵐無常物語(1688)上「其比取出の男達(だて)唐犬はなれ駒にまさるとて、虎の七内熊の武兵衛といへる二人

とう・ず とうづ【取出】

〘他ダ下二〙 (「とりいず(取出)」の変化した語。ふつう、未然形連用形の「とうで」の形が用いられる)
① とり出す。ひき出す。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「さうぞきおかれたる琴(こと)どもをとうでさせて」
② 産む。
増鏡(1368‐76頃)一六「内にさぶらひし勾当の内侍〈略〉はやう御門むつまじくおはしまして、姫宮などとうで奉りしを」

とり‐いだ・す【取出】

〘他サ四〙
① そこにあるものを取ってだす。持ちだす。外にだす。とりだす。とりいず。
※栄花(1028‐92頃)衣の珠「絹どもとりいたさせ給て、等身の仏たちを数知らずあらはさせ給」
多くの中から引き出す。掲げだす。とりいず。
※源氏(1001‐14頃)帚木「まことのうつはものとなるべきをとりいださむには難かるべしかし」

とん‐だ・す【取出】

〘他サ四〙 「とりだす(取出)」の変化した語。
※玉塵抄(1563)八「色々のたから物をとんだいてならべたぞ」
雑兵物語(1683頃)上「梅干をとんだして」

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日本歴史地名大系 「取出」の解説

取出
とりで

[現在地名]新宮市新宮

宇井野地ういのじの東にあり、中取出なかとりでとその東の端取出はたとりでに分れる。近世初期に熊野を領した堀内氏の砦があったと伝える(続風土記)。江戸時代初期頃の新宮古図(新宮木材協同組合蔵)には地名はみえないが、当地付近には在家があるほか奉公人が多く住み、百姓・町家・侍屋敷もあった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の取出の言及

【要害】より

…防御・戦闘性に富んでいること,またはそうした場所を表す語で,〈要害の地〉〈要害堅固〉などと用いるが,中世の城郭用語としては,ある種の城を指す場合と,城内の特定部分を指す場合とがある。前者は砦(取出),堡などと同じく,居城や根小屋に対置して,臨時に詰める戦闘本位の城郭を呼ぶ場合に用いる。後者は〈城中ノ要害〉(《難波戦記》),〈取出の要害〉(《家忠日記》)のように,城の内部でとくに戦闘機能の高い区画を指した。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」