取合(読み)とりあわせる

精選版 日本国語大辞典 「取合」の意味・読み・例文・類語

とり‐あわ・せる ‥あはせる【取合】

〘他サ下一〙 とりあは・す 〘他サ下二〙
① 程よく組み合わせる。調和させる。配合する。なかだちをする。
※浜松中納言(11C中)一「后・中納言の御ありさまを一つにとりあはせたる顔つきして」
② あれこれ集める。寄せ集める。合計する。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「例のつじ風出で来て、琴をばまきとりつ。天女の名づけ給し、とりあはせて十二、しら木もとり加へてまきあげつ」
③ 手に取る。手に持つ。
書紀(720)仲哀八年九月(北野本訓)「是(こ)の十握劔(とつかのつるき)を提(トリアハセ)天下(あめのした)を平(たひら)けたまへとなり」
④ 調子を合わせる。うまくとりつくろう。迎合する。追従する。
浮世草子・風流曲三味線(1706)四「御尤も御尤もと取合(トリアハ)せ云ふ人もあれど」
⑤ くらべる。比較する。対照する。
吾妻問答(1467頃)「業平・伊勢・〈略〉・定家・家隆などの面白き歌ども〈略〉我が連歌のたたずまひを取合て案をめぐらさば」
⑥ 世話をする。面倒をみる。育成する。指導する。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)四「町人出世は、下々を取合(トリアハセ)、其家をあまたに仕分るこそ、親方の道なれ」

とり‐あ・う ‥あふ【取合】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙
① 相手になる。争う。かかわり合う。
太平記(14C後)三九「斯る大社の訴詔に取合ふて、神訴を得、呪咀を負ひけるも」
② 釣り合う。調和する。しっくりする。また、俳諧などで、付合(つけあい)がうまくゆく。
有明の別(12C後)一「人の御めには、とりあはぬ御なみだぞ、つづきこぼれぬる」
③ 出合う。遭遇する。でくわす。ぶつかる。
風姿花伝(1400‐02頃)七「立合なんどに、自然女時にとりあひたらば」
[2] 〘他ワ五(ハ四)〙
互いに先を争って取る。うばいあう。
讚岐典侍(1108頃)下「我も我もと〈略〉几丁どもとりあへる人見あへれど」
② くらべる。比較する。対照する。
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)五「地脉と取合、不断と様子の替る者あらば、いつわりなく申さるべしと」
③ (「手をとりあう」の形で) 離れないよう互いの手を持つ。手をにぎり合う。
浄瑠璃曾根崎心中(1703)「やうやう二人手を取合、門口迄そっと出」

とり‐あい ‥あひ【取合】

〘名〙
① 互いに先を争って取ること。奪い合い。
咄本醒睡笑(1628)一「取合(トリアヒ)のおそきを、ぬかるといふなる」
② たたかい争うこと。いさかい。けんか闘争。合戦。
※醍醐寺文書‐(年月日未詳)(室町)足利義輝書状「於彼間取合は、是非共此方よりも相働候はん覚悟候条」
③ つりあっていること。とり合わせ。配合。
※玉塵抄(1563)七「此句の心と前の句とのとりあいの心不知ぞ」
④ とりあげること。相手になること。話にのること。
※政基公旅引付‐文亀元年(1501)閏六月二二日「何も以御取合御披露奉憑候」
⑤ とりもつこと。仲介すること。とりなすこと。
※親元日記‐寛正六年(1465)二月六日「日野殿御使〈松波〉明日御成時冝可預御執合云々」
⑥ 物と物とのつぎ目。接触点。また、さかいめ。境界点。関西地方でいう語。
※温泉(1930)〈梶井基次郎〉一「とりあひの窓のところまで行ってその硝子戸を開けて」

とり‐あわせ ‥あはせ【取合】

〘名〙
① 取り合わせること。調和するように配合すること。組み合わせ。調和。配合。
※史記抄(1477)一九「やっと云へば、やっと云て出る様な取合せがはやいぞ」
② 口添え。とりなし。仲介。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 俳諧で、物と物、素材と素材を取り合わせて発句を作る法。芭蕉門下の森川許六が特に主張した句作法。
※俳諧・宇陀法師(1702)巻頭并俳諧一巻沙汰「江東の俳諧は常に取合第一とす」

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