受験産業(読み)じゅけんさんぎょう

大学事典 「受験産業」の解説

受験産業
じゅけんさんぎょう

おもに私的教育機関が受験対策を目的として,学校外で効率的な学力向上や受験のノウハウ等のサービスを提供する産業。大学受験においては進学塾準備を専門とする予備校・塾が中心であり,また受験用参考書等の出版社やテスト業者等も含まれる。第2次世界大戦以前から受験準備を目的とした私塾は存在したが,1960年代の受験戦争過熱とともに産業として拡大した。とくに予備校は,より上位の大学への進学を希望する浪人生の受け皿となった。共通一次試験の導入を契機に,大手予備校は学力向上だけでなく受験に関する情報機関としての役割も担うこととなり,駿台予備学校,河合塾,代々木ゼミナールのいわゆる「三大予備校(日本)」は,大学入試に関する情報を収集すべく全国的にネットワークを拡大した。1990年代以降は,少子化の中でも大学進学率の上昇により受験人口は減少していないが,現役志向の高まりにより浪人生が減少するなどの変化が生じており,これに対応するため大手予備校等を中心とした予備校・塾の業界再編が進行している。

 受験産業は,これを利用する者と,家計的・地域的要因により利用できない者との教育格差を拡大する要因となっていると指摘される。その一方で予備校・塾による受験ノウハウを学校が活用するなど,公教育と受験産業が連携する動きもある。2015(平成27)年度の学習塾・予備校市場の規模は9570億円とされている(矢野経済研究所「教育産業市場に関する調査」)
著者: 黒川直秀

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報