学習塾(読み)ガクシュウジュク

デジタル大辞泉 「学習塾」の意味・読み・例文・類語

がくしゅう‐じゅく〔ガクシフ‐〕【学習塾】

学校外で教科補習進学準備の学習指導を行う、私設教育施設。塾。
[類語]予備校

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精選版 日本国語大辞典 「学習塾」の意味・読み・例文・類語

がくしゅう‐じゅくガクシフ‥【学習塾】

  1. 〘 名詞 〙 学校外で、児童、生徒に教科学習の予習、復習、入学試験準備のための学習を指導する私設の教育施設。塾。
    1. [初出の実例]「ありふれた学習塾を、この総合的で大規模な予備校につくりかえ」(出典:個人的な体験(1964)〈大江健三郎〉九)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「学習塾」の意味・わかりやすい解説

学習塾
がくしゅうじゅく

今日、一般にいわれている学習塾とは、学校教育、社会教育といった公教育制度以外の、しかも家庭教育を除いた設置許可を前提としない私的教育機関を意味する。

 範囲と類型としては、有名校への進学を目的とした進学塾、学校教育の補習などの学習塾、両者の機能をあわせもつ総合学習塾、不登校児童・生徒を対象としたフリースペース的な学習塾などがある。そのほかに、技能習熟の役割をもつそろばん、習字水泳などのためのもの、また、いわゆるお稽古(けいこ)事にかかわるピアノバレエなどのためのもの、さらには就職試験準備のための塾などがあるが、狭義にはこれらは学習塾の概念には含まれない。学習塾に通う児童の高学年化とともに、これらは学習塾にとってかわられている。以上のように学習塾は、進学のための学校教育強化機能、学校教育内容の理解不足を補うための補充機能、さらには学校・地域・家庭教育で補えない教育のための代行機能をそれぞれもつ。

[山野井敦徳]

変遷

日本の学習塾は、明治以降の近代化政策のもとで、人材登用のルートとして学校教育の選抜機能が顕在化するにしたがい、学校教育の強化ないしは代行機能としての役割を担ってきた。たとえば、第二次世界大戦前においては、選抜の厳しかった府立県立の旧制中学入試のための塾が代表的で、規模にしても少人数型のものが多かった。旧制高等学校受験のための予備校とは明らかに区別され、塾は表面には出ない存在だったといえる。

 学習塾が社会問題にされ始めたのは、第二次世界大戦後の1960年代以降で、学習塾は社会の高学歴化に伴い、全国的に発達を遂げた。当初は、高等学校入試準備のためのものが多かったが、やがて、塾に通う年齢も低くなり、中学校入試や小学生の補習のための塾も誕生した。1980年代には、「受験戦争」や「受験地獄」とよばれた受験競争の過熱化に伴って、有名進学塾に入るための塾も出現するという現象もみられるようになった。1990年代以降は、中央と地方の塾の系列校化や、大手学習塾のフランチャイズ・チェーン(FC)方式による衛星授業方式の導入などが展開されるようになった。設置形態や学習内容の多様化・差異化・分業化などの市場戦略によって、学習塾は9000億円の教育産業に発展したともいわれる。しかし他方では、18歳人口の減少、少子化社会の到来と相まって、学習塾の児童・生徒、とりわけ高学力児の確保と生存競争はいっそう激烈化している。

 学習塾の実態に関する正確な数字も、文部科学省の全国調査によってしだいに明らかにされてきた。もっとも大規模な調査は、1976年(昭和51)、1985年、1993年(平成5)、2002年、2008年の全国調査である。2008年の調査(「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」文部科学省)によれば、全国平均の通塾率は小学6年生37.8%、中学3年生65.2%となっており、2002年時より微増し、1993年当時の水準(小学6年生41.7%、中学3年生67.1%)に近づいている。なお、1976年(昭和51)時には、小学6年生26.6%、中学3年生37.4%であった。

[山野井敦徳]

学習塾の功罪

近年の学習塾のあり方は、現在の学歴社会への警告となると同時に、ある面では学校教育自体にも問題があることを示唆する結果となった。その背景には、学習塾への児童・生徒の心理的一体化と丁寧な指導による学習(教育)効果の向上、親の学校や塾に対する考え方の変化がある。文部省(現文部科学省)はこうした事態を受けて、1994年(平成6)6月に学習塾団体との会合をもったが、「過熱か否か」をめぐって平行線で終わり、学習塾の認知には至らなかった。しかし他方では、大手学習塾(予備校)と高校および大学との連携が、授業や講師派遣、入試業務などにおいて進行してきた。

[山野井敦徳]

学習塾をめぐる連携と課題

文部省は1999年度の生涯学習審議会の答申を受けて、学習塾の「条件付き承認」に踏み切り、学習塾・学校・地域の三者連携を促進するため、塾経営者・学校教師・親らが協議する場の設置を決めた。その目的は、学習塾のカリキュラムに多様な体験学習などを盛り込み、地域や学校との連携を図ることにある。しかし、塾業界には「行政介入や規制につながるのでは」と警戒する声も強い。元来、大手学習塾は、文部省の規制を受けない自由な学習機関として考えられてきた。しかし、実態としてはすでに公教育とくに高等教育機関(私立大学)の改革と相まって、学習(教育)やAO入試(アドミッション・オフィス入試、学力以外の面を総合的に考慮して選抜を行う試験制度)などで高等教育機関との連携を深めてきており、改めてそのあり方が問われている。2000年以降の学習塾を取り巻く環境としては、少子化、中高一貫教育の増加によって、市場はより厳しくなってきているが、他方では、学校教育との連携や中・高等学校経営が模索されるなど、学習塾自体の再構築が進行している。

 なお、塾の本質は、学習者の学習意欲を基本とする、教授する側と習う側との緊密な教育的紐帯(ちゅうたい)にあり、両者の精神的関係が優先される。このような日本の伝統的塾教育の独自性からみても、真の塾の復権が望まれる。そして、これらの問題は幼稚園から高等教育までの公教育のあり方自体とも関わっている。社会の変化と教育の市場化という事態を踏まえて、両者の教育的な枠組みの再構築が要請されている。

[山野井敦徳]

『文部省編『全国学習塾通いの実態』(1976)』『新堀通也編『日本の教育』(1981・有信堂高文社)』『稲村博・小川捷之編『塾』(1982・共立出版)』『文部省編『児童・生徒の学校外学習活動に関する実態調査』(1987)』『角替弘志・山本恒夫編『学校をとりまく勢力』(1988・第一法規出版)』『文部省編『全国学習塾調査結果(速報)』(1994)』

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世界大百科事典(旧版)内の学習塾の言及

【私塾】より

…また昭和前期には橘孝三郎の愛郷塾など,国粋主義的運動による私塾もあった。 現代の私塾として,小・中学生らに対する学習塾,進学塾,ピアノ,そろばんなどのおけいこ塾があげられる。文部省の初の塾調査(〈児童生徒の学校外学習活動に関する実態調査速報〉,1977)では,小・中学生の20%が学習塾に,51%が稽古事(おけいこ塾)に通っていた。…

※「学習塾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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