過熱(読み)カネツ

デジタル大辞泉 「過熱」の意味・読み・例文・類語

か‐ねつ〔クワ‐〕【過熱】

[名](スル)
必要以上に熱くなること。許容範囲を超えて熱くなること。「ボイラー過熱して火災を起こす」
液体を沸騰させずにその沸点以上に熱すること。また、沸点以上になっても沸騰しない状態
度を超した状態になること。「議論が過熱する」
[類語]温熱火熱かねつ炎熱焦熱熱気温気うんきいきほとほとぼり余熱地熱電熱気化熱融解熱放射熱灼熱赤熱白熱加熱暖房保温予熱断熱発熱放熱高熱ヒート

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精選版 日本国語大辞典 「過熱」の意味・読み・例文・類語

か‐ねつクヮ‥【過熱】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 熱しすぎること。必要以上に温度が高くなって危険な状態になること。
    1. [初出の実例]「機関の過熱を防ぐこと必要なり」(出典:作戦要務令(1939)一)
  3. 物質を沸点以上に熱しても、沸騰(ふっとう)しない状態。凝固点以下に冷やしても、凝固しない状態を含めていう場合もある。不安定で、外部条件のわずかな変化によって、急激に沸騰や凝固を起こす。
  4. ( ━する ) 景気、人気、気分などが異常に高まること。
    1. [初出の実例]「胸をかきたてる昂揚、過熱された情念が僕を内側から充たし」(出典:芽むしり仔撃ち(1958)〈大江健三郎〉七)

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改訂新版 世界大百科事典 「過熱」の意味・わかりやすい解説

過熱 (かねつ)
superheating

相転移(一次)を起こす転移温度より高温になっても転移が起こらずもとの相(低温相)が存在する現象,またはその状態。沸点より高い温度に熱せられた液体が気体にならず液体(低温相)のままでいる状態は,その代表的な例である。このような過熱液体は,液体を静かに保ったまま非常にゆっくりと加熱することによって得ることができる。過熱状態は,転移温度より高温になっても低温相が準安定状態(熱力学的に最も安定というわけではないが,微小なゆらぎに対しては安定な状態)にとどまっているために起こり,過熱液体の場合も,外からある程度大きな衝撃を与えたりすると準安定状態がくずれて,爆発的に沸騰(突沸)することがある。逆に,転移温度以下になってももとの相(高温相)が存在する現象を過冷却という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「過熱」の意味・わかりやすい解説

過熱
かねつ
superheat

物質を加熱したとき転移温度を過ぎても相(固体、液体、気体の三相)の転移がみられない現象。液体の場合では、温度が上がって沸点以上になっても液体のままである現象をいう。逆の現象を過冷却という。過熱は準安定状態で、安定な相の物質を核として添加した場合や振動を与えた場合、ただちに安定な状態に転移する。過熱状態の液体の場合、突沸(いきなり沸騰すること)する。ある圧力下で、蒸気と液体が平衡である場合、その平衡状態での温度以上に熱せられた蒸気を過熱蒸気という。

[山本将史 2022年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「過熱」の意味・わかりやすい解説

過熱
かねつ
superheating

液体が沸騰しないで沸点より高い温度まで熱せられた状態。過熱状態は,液体をなめらかな内面をもつ容器に入れ,ゆっくり熱すると容易に実現される。過熱された液体は不安定で,外部からの衝撃や異物混入によって突沸を起し,温度が沸点まで下降する。核物理学で用いられる泡箱は,この現象を利用した荷電粒子検出器である。一般には,相変化が起るはずの転移温度より高温になっても,もとの相のままの状態を保つことを過熱という。過熱状態は一種の準安定状態で,衝撃などによって急激にその温度における安定な相となる。また,沸点以上の温度に熱せられた蒸気を過熱蒸気ということがある。

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化学辞典 第2版 「過熱」の解説

過熱
カネツ
superheating

】液体を沸点以上に加熱しても沸騰が起こらない状態.固形異物を含まない清浄な液体を,なめらかな内壁の容器中で加熱するときに起こりやすい.過熱状態が破れると,しばしば突沸を起こす.【】液体の沸点以上の温度に蒸気を加熱すること.[別用語参照]過熱蒸気

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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