日本大百科全書(ニッポニカ) 「可視光通信」の意味・わかりやすい解説
可視光通信
かしこうつうしん
目に見える波長(380~780ナノメートル)の光を使ってデータをやりとりする無線通信(技術)。発光ダイオード(LED)やインバーター型蛍光灯などを肉眼で認識できない程度の高速度で点滅させたり周波数を変調させたりし、これを「0」「1」のデジタル情報に変換して通信する。可視光は医療・精密機器やペースメーカーなどに悪影響を与えないため、病院や電車、航空機内、水中など電波が使えない場所での通信手段として期待されている。照明器具をそのまま通信に使えるため設備投資が低くおさえられ、通信範囲は光が届く場所に限られるため盗撮や盗聴がむずかしいという利点がある。さらに電波法の規制を受けず、免許を取得せずに利用できる。
2003年(平成15)に慶応義塾大学教授の中川正雄(1946― )が中心となって実用化を目ざす可視光通信コンソーシアム(Visible Light Communications Consortium 略称VLCC)が発足。NTTドコモや日本電気(NEC)などの民間企業とともに本格的な研究が始まり、総務省でも2006年に検討を始めた。通信方式が世界各国でばらばらにならないよう、アメリカ電気電子学会が国際標準を決定する予定である。室内や工場内、航空機内などの通信手段として2010年代なかばまでに実用化されるものとみられている。
[編集部]