奈良県下市(しもいち)町を中心とした吉野地方に産する漆器。黒漆(くろうるし)地に朱(しゅ)漆で文様化した木芙蓉(もくふよう)を器面いっぱいに描いた漆絵で装飾される。吉野絵ともいわれ、豊臣(とよとみ)秀吉が吉野観桜の際同行した茶人が考案した意匠と伝えているが、茶席の料理の食器として、椀(わん)、飯器、折敷(おしき)、盆、膳(ぜん)、鉢などにみられる。また、花文は木芙蓉と断定しがたく、葛(くず)、牡丹(ぼたん)、芍薬(しゃくやく)、梅の花から取材し便化(べんか)したという説もある。その類似品は、江戸時代後期に京都や能登(のと)(石川県)の輪島、加賀(石川県)の山中などでもつくられるようになった。
[郷家忠臣]
…南部椀ともいわれる),会津塗(福島県),輪島塗(石川県),若狭塗(福井県小浜市の産。変(かわり)塗の一種),吉野塗(奈良県吉野地方の産。吉野絵,吉野彫,吉野根来,吉野春慶など),黒江塗(和歌山県海南市の産),大内塗(山口県山口市の産。…
※「吉野塗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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