日本大百科全書(ニッポニカ) 「名飯部類」の意味・わかりやすい解説
名飯部類
めいはんぶるい
江戸時代の料理書。著者名の記載はないが、大坂の医家、杉野権兵衛(ごんべえ)、あるいは杉野権右衛門(ごんうえもん)といわれる。1802年(享和2)大坂で刊行。炊飯を扱った料理書は少なく、飯、粥(かゆ)、鮓(すし)など米の調理だけの専門書として本書は貴重である。例言に「古(いにしへ)には飯に魚鳥菌菜(きのこあをもの)を調匂(まぜあは)し、或(ある)ひは飯に和(あは)し炊くを包飯(はうはん)といひしとぞ、今其品類(そのしなじな)によりて部類(わかちるい)を追ひ名飯部類といふ、たとへは尋常飯(ただごとめし)、諸菜飯(しょなめし)、菽豆飯(まめめし)、染汁飯(そめめし)、調魚飯(うをめし)、烹鳥飯(とりめし)、名品飯(めいはん)等也(なり)」、「尋常飯は戸々朝食暮飧(いへいへあさめしゆふめし)に用ひ人々のよく慣習(てなれ)たるもの或ひは魚鳥菌菜の類を加搓(いれまじへ)せざるものをいふ。諸菜飯は菜蔬(あをな)の類一品を加するものを云(いふ)」とある。尋常飯が麦飯など18、諸菽豆(まめ)飯が赤小豆(あずき)飯など10、紫蘇(しそ)葉飯など菜蔬飯11、茶飯など染汁飯4、はまち飯など調魚飯14、鶏肉飯(けいはん)など烹鳥飯4、骨董(ごもく)飯など名品飯26、付録として河豚(ふぐ)雑炊など雑炊20、粥類10、こけらずしなど鮓類32の作り方が記述され、よい米を選ぶことが肝要だとしている。
[小柳輝一]