呂蓮(読み)ロレン

日本大百科全書(ニッポニカ) 「呂蓮」の意味・わかりやすい解説

呂蓮
ろれん

狂言の曲名出家狂言旅僧シテ)が一夜の宿を請うと、快く迎え入れたその家の主人は、僧の教化(きょうげ)を聞き、出家したいといいだす。妻や一族にも了解済みとのことなので、主人の頭を剃(そ)り、予備にもっていた衣まで着せてやる。さて、名をつけてほしいと頼まれ、いろは手本を見ながら、い蓮坊、よた蓮坊などと口ずさむが主人の気に入らず、やっと呂蓮坊に落ち着く。ところが、そこへ食事を運んできた妻が驚き、なぜ出家したと責めたてると、主人は旅僧の勧めでなったと言い訳する。あと、大蔵(おおくら)流では夫は先に逃げてしまい妻が旅僧を追い込むが、和泉(いずみ)流では夫婦で旅僧を倒し連れ立って入っていく。宿の主人のふと出家したくなる遁世(とんせい)への願望に中世的人間像が感じられる。

[小林 責]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android